凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
再会
桜が散り、新緑の季節が近づいた。
「では、今日のミーティングは以上になります。お疲れさまでした」
びっしりと書き込まれたリングノートを閉じ、ふぅと息をつく。
事務室の小さなテーブルを囲んでするミーティングも今日で四回目。成田国際空港店を担当するようになって一ヶ月が経ち、少しずつ仕事を覚えてきたところだ。
オープンして間もなくは、一週間に一度のミーティングを行い、売り上げや客層の把握、近隣店舗との比較を行いながら、今後の方向性を話し合っていく。
まだ異動してきたばかりの私は右も左も分からない状態で、凄腕のエリアマネージャーとベテラン店長の向坂さんに支えられて勉強させてもらっている。
「朝倉ちゃん、仕事はもう慣れてきた?」
向坂店長はとても気さくな男性で、毎回ミーティング終わりにコーヒーを出してくれる。ブラックコーヒーに、いつものように店長こだわりの小さな角砂糖をふたつ落としてかきまぜた。
「やっと少しずつ、って感じですかね」
「最初はそんなもんだよね」
にこりと微笑む店長は、推定三十代後半といったところだろうか。
清潔感のある見た目でエプロンがよく似合い、店頭に出れば女性客の目が潤っていく。物腰も柔らかく、なにかと気にかけてくれる優しい人だ。
「今日もお店見て帰るの?」
「はい。あ、ご迷惑でなければ……」
「ああ、うちは全然。いつもいつも仕事熱心だな、と思って」
続けて「ごゆっくり」と言い残し、店頭の方へと戻っていく。