凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ

 メッセージなんてきていたかとスマホを開いたら、あっ、と声が出る。


「ごめん、機内モードにしたままだ」


 モードを解除した途端、菜乃花からのメッセージやら電話の着信履歴が一気に舞い込んできた。


「もう、人に迎えにこさせといて。そういうとこあるよね」
「ごめんごめん。はい、これ頼まれてたやつ」


 買ってきたお土産で機嫌をとるように紙袋を手渡すと、満更でもなさそうに表情を和らげて「おかえり」と照れ臭そうに口にした。


 菜乃花の後ろを歩きながら、ピンクのインナーカラーが入った髪色を見つめる。がちゃがちゃした柄のパーカー、短いショートパンツとロングブーツ。

 さすが美大生……なんて久しぶりに見た妹の派手さに感心すらしてしまう。

 静菜(しずな)という名前の通り、静かで控えめな性格の姉と、華やかで明るい妹。菜乃花は昔から私とは正反対だった。

 私はモノトーンだったり落ち着いた雰囲気の服が多くて、学生の頃はちょっと違う髪色に挑戦してみようかと思ったりもしたけれど、結局毎回同じような焦茶色を選ぶ。食べるメニューもいつも同じ。大概挑戦ができない。

 姉の私から見ても可愛い顔をしている菜乃花は、天真爛漫で男性からモテるらしく、会うたびに彼氏をコロコロと変えていた。もう何年も恋人がいない私とは、本当になにもかも違う。

 ここまで対照的だとぶつかることがなく、年が離れていることもあって今まで喧嘩らしい喧嘩はした記憶がなかった。


「お姉ちゃんが久しぶりに帰ってくるからって、お母さん張り切ってご飯作ってたよ」
「本当? じゃあ私の好きな肉じゃがあるかな」



< 3 / 96 >

この作品をシェア

pagetop