凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
「異業種交流会なんだろ。合コンじゃあるまいし」
バチバチとにらみ合うふたり。
仲がいいのか、悪いのか。
私は、まあまあ、となだめながら店の中へと押し込んだ。
間接照明の薄暗い店内に入ると、ゆったりとしたジャズが流れている。高科さんからは先についていると連絡が来ていて、少しレトロな雰囲気のある内装をキョロキョロと見回しながら入っていった。
「ねえ、あれじゃない?」
先に気づいた未奈子の視線の先には、立ち上がってこちらに合図している高科さんの姿があった。
丸襟の白いTシャツに、薄いカーキ色のセットアップ。
はじめて見る彼の私服姿があまりにもおしゃれで、思わずどきっとする。
「すみません、遅くなりました」
「全然。こっちも今来たところで」
横長のテーブルには高科さんを挟むようにふたりの男性と黒髪の女性が並んでいた。近づいていくと、にこりと微笑んできた女性はハーフ顔の綺麗な顔立ちをしていて、いかにもCAという雰囲気。
どこかで見たことがあるような気がする。少し引っ掛かりながら、軽く挨拶を交わした。
「どうしよう、前の人めちゃくちゃタイプ」
座るなり、未奈子にぐいっと腕を持っていかれ耳打ちされた。
事前にパイロットの先輩をふたり連れて行くと聞いていて、そのうち色白であっさりとした中性的な男性は、まさしく未奈子が好みそうな顔だ。
早速会話に入っていく彼女はいつもより声をワントーン上げて、夢中になっている。昨日まで『それとなくフォローしてあげるから』なんて言っていたのに、もうすっかりそんなことも忘れているだろう。