凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
あの日の真実
『あのふたり、幼馴染なんだって』
交流会の翌日、未奈子から聞いた事実に私はひどく落ち込んだ。
『昔、付き合ってたこともあるみたい。彼女のほうはまだ好きなんじゃないかって』
私が帰ったあとも続いた飲み会の席では、高科さんと莉央さんの話が話題に上がっていた。職場でもふたりの関係はかなり有名らしい。
莉央さんの想いが彼に向いていることはすぐにわかった。
でも、まさかふたりの間にそれ以上の深い関係があったなんて思いもしなくて、不安に駆られる。
高科さんは、まだ彼女のことが好きなんだろうか。
ふとあの唇の感触を思い出ながら、どうしてあの時キスなんてしたんだろうと、そればかり考えてしまう。あの日は、自宅に帰ってからもそのことが頭から離れなくて、どうやって眠りについたのかもうまく思い出せない。
あれから一ヶ月。
それが答えだと言わんばかりに、高科さんからの連絡は一度もない。
私は今でもあの光景を鮮明に覚えているというのに、彼にとっては忘れてほしい出来事だったみたいだ。
この憂いた感情を煽るような大雨が、窓の向こうで降り注ぐ。ここ最近の空気は、どこか湿気を帯びてどんよりとしている。私の心の中が現れているみたいだった。
今日も、昨日と変わらない一日。
昨日も、その日の昨日となにひとつ変わらなかった。
毎朝同じ時間に起きて、同じ電車で通勤して一日が終わる。このままなにごともなく、一年なんてあっという間に過ぎてしまうんだろう。
会議室に残って使い終わったプロジェクターを片付けながら、ふとそんなことを思った。