凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
秘めた恋心
真夏の暑さが続く八月下旬。
外に出るだけで体力を奪われ、蟬の音もそこら中で響いている。
高科さんとはあれから何度も電話やメッセージのやり取りをしている。
私との失った時間を埋めるように、本当に出会い直そうとしてくれているのが分かった。
でも月の半分は海外を飛び回っている彼とはなかなか予定が合わず、最近は私の仕事も忙しくなってきて、実際に会えたのはほんの数回程度だ。
他愛もないことでメッセージを送り合ったり、食事をした最後には当たり前のように次の予定を確認する。
そして、別れ際にはキスをする。
好きだとか、付き合おうとか、そんな明確な言葉はもらっていない。キス以上のこともしていない。
でも、明らかに気持ちが通じ合ってきているのは感じていた。
本当はこの関係に名前がほしい。
私たちって付き合ってるんですか――。
そう聞いてしまいたくなる。でも、今更そんな野暮な質問もできなくて、一歩が踏み込みきれずにいる。ましてや、それを聞いて違ったとき立ち直れる気がしなかった。