凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ

「同期だからじゃない。朝倉だからだよ」


 その勢いで、近くにあったボタンが押されてしまった。

 しんとした静けさの中、ペットボトルが重い音を立ててガコンと落ちてくる。響いた音はやけに大きく聞こえて、その後の静寂がより深く感じられた。

 今、私はだれかに背後から抱きしめられている。

 だれかと言っても、考えられる人物はたったひとりなのに、あまりに想定外すぎて理解が追い付いていなかった。


「俺の言ってる意味、分かってる?」


 耳障りのいい低い声質。こんなにも近い距離で加賀美くんの声を聞いたのは初めてかもしれない。

 私は放心状態のまま、棒のように固まっていた。

 ごくりと唾を飲み込む音さえも立ててはいけない気がして、浅く息をひそめるような呼吸をする。


「ずっと好きだった」


 そして、はっきりと告げられた言葉に、私はなにも返せなかった。



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