凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
『おかけになった電話は電波が届かない場所にあるか、電源が入っていないため――』
聞き終わる前にスマホを耳から遠ざけた。
なにをするでもなく、気を紛らわせるように深夜のバラエティ番組をつけた。楽しそうな笑い声が広がる。でも高科さんのことばかり考えてしまう私は、右から左に抜けていき、なにも頭に入ってこない。
楽しそうな映像をぼんやりと見続け、何度も時間を確認した。
深夜二時。ガチャッと玄関の鍵が開いた音が聞こえた。
慌てて立ち上がり廊下から顔をのぞかせると、ずっと待ち望んでいた高科さんの姿があった。
「ごめん、遅くなって――」
構わず、私は彼に飛びついた。背中に腕を回し、ここにいると確かめるようにぎゅっと力をこめる。
「よかった……」
「ごめんね、連絡できなくて」
「いいんです、無事に帰ってきてくれたから」
すると、包み込むように腕を回され、彼の手がポンポンと撫でるように頭を優しく触った。
ゆったりと穏やかな時間に浸る。
彼の胸元に顔を埋めていたら、急にハッと我にかえった。
「すみません、疲れてますよね。一応お風呂入れておいたんですけど」
後ずさるように離れた私は乱れた髪を耳にかける。
そのとき、ぐいっと勢いよく引き寄せられた。