凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
クリスマスの夜

 高科さんと同棲生活をはじめて二ヶ月ほどが経とうとしていた。

 季節も変わり、今月はクリスマスを控えている。

 ボブズのメニューもすっかり冬仕様になり、毎年恒例のショコラムースラテがメニューに仲間入りをしたところだ。


「さすが混んでるね、すぐ入れてよかったわ」


 未奈子は厚手のコートを脱ぎながら、お昼のピークタイムで満席になったアズーロの店内を見回す。未奈子とはたまに時間を合わせてふたりでランチをすることがあり、今日はなんとなくここのパスタランチが食べたい気分だった。

 オープンと同時に、店の外まで並んでいるのを見て一瞬諦めかけたけれど、ぎりぎり滑り込めてよかった。


「いいなあ、静菜は順調に愛をはぐくんでて」


 食後の紅茶を飲んでいると、頬杖をついて羨ましそうに言われた。

 最近会うたびにそればかり口にする。最初の頃は「それ三回目」なんて言っていたけれど、いつからかもう数えるのも面倒になってツッコむのもやめた。

 未奈子は異業種交流会でタイプだと言っていたパイロットの男性とあれから何度かデートを重ねたものの、付き合うまでには至らなかった。

 彼女曰く、なんか違った、らしい。


「でもさ、全然帰ってこなくて寂しくない? 今日もいないんでしょ?」


 高科さんの仕事は相変わらず忙しい。

 月に何度も国際線のフライトがあって、そのたびに何日も家を空けることが多かった。一応現地から連絡をくれるものの、時差もあってなかなかうまく合わなかった。

 ちょうど今ニューヨークに行っていて、今夜三日後ぶりに帰ってくることになっていた。


「一緒に住んでる分、会える回数は増えたから大丈夫。高科さんもそう言ってたし」
「ねえ、まだその高科さん呼びなの?」
「いいでしょ、慣れちゃったの」


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