凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
海外転勤の話が現実に舞い込んでくるなんて、頭の中が真っ白になる。
行きたい。直感でそう思ったあと、すぐに高科さんの顔が浮かんだ。
今回の話は、プロジェクトチームとして駐在していた短期間の赴任とはわけが違う。完全な異動で、期間だって決められているわけではないだろう。
「もちろん、今すぐ決断を出せなんて言わない。海外転勤の対象者は事前に告知されて、断ることもできるからね」
「はい」
「でもその代わり、今後もチャンスが回ってくるかは分からない。だから慎重に考えて、答えを出してほしい」
回答期限は、クリスマス。
二週間後の、十二月二十五日だった。
「なんだった?」
自席に戻ると、ふらっと現れた加賀美くんが尋ねてきた。
一瞬、相談したいとそこまで出かかった言葉は、なんとか飲み込んだ。
「うん、ちょっと仕事のことで」
まだ心の整理ができておらず、私は咄嗟に誤魔化した。