凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ

「ニューヨークか……」


 家に帰り、パソコンを開きながらつい調べてしまう。

 二週間後には答えを出さなきゃならないなんて、時間が短すぎる。

 人生を左右する大事な決定。

 頭の中がぐるぐるとして、なにも考えられなかった。


「ただいま」


 玄関があいて、ニューヨークから高科さんが帰ってきた。

 咄嗟にパソコンを閉じて立ち上がると、彼の顔を見て胸が苦しくなった。


「おかえりなさい」
「あ、今日ハンバーグ?」
「うん、温め直すね」
「ありがとう。すぐ着替えてくるよ」


 食卓に並んだメニューを見て嬉しそうに微笑んだ。

 私の作る料理の中で一番好きだと言ってくれた和風ハンバーグ。今日の夕食にこれを選んだのは、海外転勤の話を聞いてしまったからかもしれない。


「やっぱり美味しい」


 満足げにお肉を頬張る表情を見て、私まで幸せな気持ちになる。

 この幸せを手放したくないはずなのに、心のどこかでずっと迷いが生じていた。


「そうだ。クリスマスどこか行きたいところある?」


 クリスマス。

 そのワードにビクッと反応して、思わず箸を落としてしまった。


「ごめん、洗ってくる」


 明らかに動揺している。蛇口から勢いよく出てくる水に箸をくぐらせながら、落ち着け、と何度も心の中で唱えた。


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