凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
きっと去年の今頃なら、私は喜んで承諾していただろう。ロンドンで生活を送りながら、このままずっとここにいてもいいと思っていたくらいだったから。
だけど、私は大切にしたい人と出会ってしまった。
「高科さんはなんて?」
未奈子の問いかけにグッと唇をかむ。
「まだ言ってない」
「え、だってそれ、いつまでに答え出すの?」
「来週、月曜日にはって」
あとちょうど一週間。本当に時間がなかった。
「俺は行くべきだと思う」
すると、加賀美くんが真剣な顔で言った。
「朝倉が海外で働きたいって言ってたの、俺らはよく知ってるし。正直、そう簡単に回ってくるチャンスじゃないと思う」
正論をぶつけられ、返す言葉もない。
もし今回断ったら、きっと一生後悔が残るのは自分の中でも気づいていた。