凄腕パイロットは12年越しの溢れる深愛を解き放つ
【今夜、別の店を予約したんだ。昨日できなかったクリスマスディナー、やり直そう】
家を出た直後に送られてきたメッセージ。
私はそれを見た瞬間、あともう一日だけ返事を待ってほしいと頭を下げることに決めた。部長は、快く明日のお昼までに期限を延ばしてくれて、もう一度考える時間ができた。
今度こそちゃんと高科さんと向き合って、決断したかった。
とあるホテルの前で待ち合わせた彼に連れられて、ホテルの最上階にあるフレンチレストランに入っていく。大きな水槽が置かれた幻想的な空間。クリスマスの当日になんて、絶対予約ができないような高級レストランだった。
「知り合いの店なんだ。無理言ってひと席開けてもらった」
不思議に思っていた私に、こっそりと耳打ちされ納得する。
そんな人脈を持っていたのかと感心してしまった。
コース料理を食べながら、私たちは久しぶりに出会ったころの話をした。まだ半年しか経っていないのに、もう随分と一緒にいるような気がする。
「懐かしいですね」
「うん」
私はメインの牛肉を食べ終えて、ここだと思いナイフとフォークを置いた。
「高科さん、私本当はニューヨークへ行きたいです」
彼はシャンパングラスを持った手を止めた。
一瞬固まったあと、優しく微笑み「うん」と頷いた。
「行ってきてもいいですか」
緊張気味に告げると、彼がナフキンで口元をぬぐい力なく笑う。
「当たり前でしょ。俺は、君の夢を応援したいんだよ」
「高科さん……」
「だから静菜、結婚しよう」
彼は小さな箱をポケットから取り出して、私の前でゆっくりと開く。
眩しいほどダイヤモンドが輝いていた。
「ニューヨーク行きの話がなくても、はじめから昨日渡すつもりだった」
「うそ……」
「俺はどこにいても君のそばにいる。離れたって大丈夫だって言ったでしょ」
涙が止まらなかった。
震える手に通された指輪は、私の指にぴったりとハマる。
「返事は?」
左手を優しく包み込む彼が言う。
嬉しくて嬉しくて言葉に詰まり、私は涙をこぼしながら何度も何度も頷いた。