略奪☆エルダーボーイ
第5話 モヤモヤ
黒瀬さんに脅される形でマネージャーになってから、1ヶ月が経った。
あれ以来、急激に黒瀬さんと関わることが増えてきた。
朝と夕方の送り迎えに、部活中・・・関わる機会自体は少ないけど、短い時間に濃厚な絡みをしてくるようになったと言った方が良いだろう。
会う度に誤解されそうなことを言ってきて、挙句の果てに抱きついてきたり甘い言葉を吐いたりしている。
おかげで私は振り回されてばかりだ。
黒瀬さん、私が灰田くんのこと好きなこと知ってるはずだよね?
なのに、私が灰田くんと仲良くしてるとからかってきたり間に割って入ってくるし・・・。
本当、何がしたいんだろう。
「・・・で?その先輩の思わせぶりな態度に悩んでると?」
「うん・・・」
体育館の点検で部活がオフになり、親友のつぐみと一緒にお出かけ中、黒瀬さんのことについて相談する。
つぐみの逆鱗に触れないように、脅されて部活に入ったということは伏せて。
「その先輩、伊吹が灰田くんを好きな事は知ってるんでしょ?」
「い、一応知ってる、かな」
私が灰田くんに好意を寄せていることが黒瀬さんにバレたから脅される発端になった訳だから、知らないはずはないんだけど・・・。
黒瀬さんの行動は、まるで灰田くんから私を遠ざけようとしているみたいで。
私だけじゃ答えにたどりつけそうもなかったからつぐみに相談したわけなんだけど・・・。
「知っててなお伊吹にちょっかいかけてるってことは・・・その先輩、伊吹に気があるんじゃない?」
「やっぱそう思うよね〜・・・!」
帰ってきた答えは、私が想像していたものと同じで思わず顔を覆いながら呟く。
そうだよね・・・あの行動はその気がないとしないよね。
「でも、何か言ったりしても冗談だよってはぐらかすんだよね・・・」
「そんなのハッタリに決まってるじゃない。伊吹の気を引こうとしてんのよ」
注文した飲み物をストローで飲みながら私の事を見つめるつぐみ。
ハッタリ・・・か。
確かにあの熱のある言い方は冗談を言っているようには聞こえなかったし・・・そうなるよね。