略奪☆エルダーボーイ
灰田くんに片思いをし始めてからしばらくたった頃。
前まではそんなに楽しくなかったはずなのに、学校に通うのが楽しくて仕方ない。
放課後の見学が、今の私の活力になっていた。
ルンルン気分で荷物を持ち直しながら教室へと向かっている時、ドンッと誰かにぶつかってしまう。
しまった・・・前あんまり見てなかった・・・。
「すみません──」
顔を上げてぶつかってしまった人を見上げる。
その人は、前に灰田くんの近くにいた先輩らしき人だった。
近くに立ってみて、改めて思う。
この人、身長高い・・・190cmぐらいあるんじゃないのかな。
「・・・こっちこそ悪い。前見てなかったわ」
少し驚いたような顔をしたあと、困ったように笑いながら手を出して謝る高身長男子。
そして、私の方を見つめてくる。
何か用事でもあるのかな?
「あのさ、君って──」
「加藤〜!!ちょっといい〜!!」
高身長男子が何かを言おうとした時、クラスメイトに呼ばれてしまう。
何を言おうとしたんだろ・・・。
「今行く〜!・・・すみません、失礼しますね」
「あー・・・うん」
名残惜しそうな雰囲気の高身長男子に申し訳なく思いながら、お辞儀をしてその場を後にした。
「どうしたの?」
私に呼びかけてきたクラスメイトに駆け寄って首を傾げる。
クラスメイトは頭を掻きながら困ったような表情を浮かべた。
もしかして、深刻な問題だったりするのかな?
「いやぁ、今日の日直変わって欲しくてさ〜。放課後彼氏とデートなんだよね」
「え、日直?」
どんな深刻なことかと思ったら、日直の話か。
でも、私も早く部活見に行きたいし・・・。
「お願い!!次の日直変わるからさっ!!ねっ!?」
「・・・いや──」
「やってくれる!?ありがと〜!!んじゃ、よろしくね!」
断ろうとして口を開くけど、先手をとってお礼を言ってどこかへ行くクラスメイト。
「あ、ちょっと──」
去っていく後ろ姿に声をかけるけど彼女が振り向くことはなく、日直を押し付けられてしまった。
誰も“良いよ”なんて言ってないんだけど・・・。
「・・・ハァ〜・・・」
早く灰田くんに会いに行きたかったんだけどなぁ。
でも、いつもより遅くなるだけで見に行けなくなるわけじゃない。
だけど、自分の意思で受けた訳じゃないからなんかやるせない気持ちになってしまう。
日直終わらせてからデートに行けばいいのに、なんて思ってしまうのは、私の心が狭いせいかな。