略奪☆エルダーボーイ
黒瀬さんと別れて教室へと向かう。
その最中、灰田くんが女子に囲まれているのを見かけた。
やっぱり、人気なんだ・・・灰田くん。
「ねぇ、陸くんって女の子の髪型はロング派?ショート派?」
1人の女子が灰田くんに対して問いかけたのが不意に聞こえてくる。
それが気になって一瞬立ち止まってしまう。
「俺?うーん、どうだろ・・・どっちかって言うと、ショート派かな」
それを聞いた時、ガツンと衝撃を受けたような感覚に陥る。
そっか・・・灰田くん、ショート派なんだ・・・。
そう考えながら、その場を後にする。
・・・髪の毛、切ろうかな。
自分の髪の毛を見てそんなことを考えながら教室へと入る。
すると、つぐみがパタパタと音を立てながら私の所へと駆け寄ってくる。
「伊吹、昨日はごめんね!」
私の目の前に来るなり、パンッと両手を合わせて頭を下げてくるつぐみ。
「別に気にしてないけど・・・あの時の用事ってなんだったの?」
「あはは、ちょっとね。それにしても、昨日の帰り、大丈夫だった?相談してきた人と一緒だったけど」
「えっ──」
つぐみに言われて、昨日の帰りのことを思い出す。
車が近付いてきて・・・それで、黒瀬さんに抱き締められて・・・。
「っ──・・・!!だ、大丈夫!!問題なかったよ!!」
「・・・ふぅん・・・大丈夫な顔に見えないけど?」
思い出した瞬間、火がついたかのように頬が熱を持つ。
それを見たつぐみはニマニマと笑みを浮かべている。
まるで新しいおもちゃを見つけた子供みたいだ。
「そんなんじゃないってば!そんな事より、私聞いちゃったんだけど、灰田くんって髪型ショート派だったの?」
「あー・・・知っちゃった?そうらしいよ」
「・・・だよね・・・本人が言ってたし・・・」
うー・・・と唸りながら考え込む。
本格的に髪の毛切ろうかな、なんて考えてしまう。
「・・・なに?髪の毛切ろうとか考えてる?」
「えっ!?・・・まぁ・・・ちょっとだけ・・・」
「自分でショート似合わないって言っておきながら?」
「うっ・・・」
つぐみの発言に言葉を詰まらせる。
私はショートが似合わない。
だけど・・・灰田くんはショートが好きだし・・・。
「・・・まぁ、強いて言うならって感じらしいし、気にしなくていいんじゃない?」
「・・・うん・・・」