略奪☆エルダーボーイ
時は過ぎ放課後──ようやく授業を終え、部活に行くために準備を始める。
「伊吹ちゃん、準備終わった?」
荷物をまとめていると、教室の前に黒瀬さんが現れる。
毎日のように迎えに来る黒瀬さんに驚かなくなってきた。
「ちょっと待ってください。今準備しちゃうので」
「いいよ、ゆっくりで。それにしても・・・学校でも読んでるんだ、ルール本」
教室の中に入ってきた黒瀬さんは、私が手にしていたルール本を見つめる。
頭に入れてはあるけど、ヒマな時に読み返して間違いがないか確認していたから手元に置いといたんだけど。
「間違えて覚えてたら大変なので、時間がある時に確認してます」
「へぇ、偉いね」
そう言って頭を撫でる黒瀬さん。
黒瀬さんって、本当に私の頭を撫でるの好きだよね・・・。
というより、髪の毛が好きなのかな?
「・・・あの、黒瀬さん」
「ん、なに?」
頭を撫でるのをやめ、手を頭から離した状態で私の方を見る黒瀬さん。
「・・・私って、ショート似合うと思いますか?」
ふと頭をよぎったことを聞いてみる。
まぁ、自分でも似合わないって思ってるんだけど・・・一応。
「うーん・・・そうだね・・・。俺は、伊吹ちゃんはロングが似合うと思うけど・・・もしかして、髪切るの?」
「いや、切ろうかどうか考え中でして・・・」
荷物を背負いながら正直に話す。
まぁ、灰田くんがショート派だから悩んでる、というのは伝えないでおこう。
「切らないで」
「え?」
「髪、切らないで。長い方が似合うから」
マジマジと見つめながら、私の髪の毛をいじる黒瀬さん。
「せっかく綺麗な髪してるんだから、切っちゃうの勿体ないよ」
「え・・・あ、はい・・・」
黒瀬さんの熱い視線に根負けして思わず頷いてしまう。
さっきまで切ろうかどうか悩んでたはずなんだけど・・・。
ここまで言われるなら、切らなくてもいいかな、なんて思ってしまう。
「良かった・・・俺、ロング派だからさ。伊吹ちゃんには長いままでいて欲しいんだ」
「え、なんで・・・?」
「なんでって・・・そりゃ、好きだからだよ」
「──え?」
熱い視線と甘い声でささやく黒瀬さんに思わずドキッとしてしまう。
す、好きって・・・!?
「・・・言ったでしょ?俺、ロング派だって。長い髪が好きなんだ」
「・・・そ、そうですか・・・」
なんだ、髪のことか・・・。
一瞬、私のことが好きって言ったのかと思っちゃった。
正直に言うと、私のドキドキを返して欲しい。
「準備もできたし、そろそろ行こっか」
「──はい」