略奪☆エルダーボーイ
部員の怪我で時間を取ってしまったけど、ドリンク作りを再開する。
遅くならないように急がなきゃ・・・。
そう思いながら、残りのドリンクも作り始める。
その時、ガラッと体育館へ繋がる扉が開いた。
また何かあったのかな?
そう思い視線を向けると、そこにはタオルを首に巻いた黒瀬さんの姿があった。
ランニング終わったのかな?
「やぁ、伊吹ちゃん。ボトル作り進んでる?」
「まだかかります。すみません、待たせちゃいましたか?」
「ううん、さっきのもあって作るの遅くなるだろうなって思ったから手伝いに来た。空のボトル貸して」
私の所に歩み寄り、ボトルを作るのを手伝おうとしてくれる黒瀬さん。
「手伝わなくていいですよ、すぐ終わりますから」
「──俺が伊吹ちゃんのそばにいたいの。だから、手伝わせて」
私の方を向きながら甘えるような声を出してボトルを手に取る黒瀬さん。
私と一緒にいたいからって・・・また誤解されそうなことを・・・。
「・・・別に構いませんけど・・・そんなこと言ってると、いつか痛い目見ますよ」
「んー、なんで?思ったことを言っただけだよ?」
ボトルの中にスポーツドリンクの粉を入れている黒瀬さんに声をかける。
もし他の子にそんなことして好かれて、本気じゃありません──なんてなったらいつか刺されちゃうよ。
「なんでって言うか・・・そんな勘違いしそうな言葉、私だって本気にしちゃいますよ」
「──本気にしてよ、伊吹ちゃん」
「え──・・・」
ボトル作りの手を止めて私の手に手を重ね、私の事を見つめる黒瀬さん。
その行動に、ドキッと心臓が高鳴った。
本気にしてって・・・そういうことだよね?
「・・・あ、あの・・・黒瀬さん・・・?」
意識した途端、沸騰したかのように頬が赤くなっていく。
触れられている手がとても熱い・・・言葉が・・・出てこない。
「・・・なんてね。そんなことより、早くボトル作っちゃおっか」
「え・・・?あ、はい」
また、冗談だったの・・・?
なんか、最近日を増す事に冗談言われるの増えてきたな。
本気にしてよって言ったの、そっちなのに。
そんなことを思いながら、ボトルを作り続けた。