略奪☆エルダーボーイ
黒瀬さんの手伝いもあって、すぐにドリンク作りが終わる。
「ありがとうございます、あとは私が──」
そう言ってドリンクを入れたカゴを持とうとした時、黒瀬さんに先を越されてしまう。
「私持ちますよ」
「俺が持ってくよ。重いでしょ?」
片手で軽々と持った黒瀬さんは、私の方に視線を向ける。
私、両手じゃないと重くて持てないのに、あんなに軽々と・・・。
だけど、さすがに手伝ってもらった上に運んでもらう訳にはいかない。
「え、でも──」
「いいからいいから。先輩の厚意には甘えなさい」
そう言うなり私の頭を撫でて優しく微笑む黒瀬さん。
その表情を見てドキッと心臓が高鳴り、思わず視線を逸らしてしまう。
なんで黒瀬さんの事見てドキドキしてるんだろ・・・私・・・。
「・・・ありがとう・・・ございます・・・」
「ふふっ・・・どーいたしまして」
俯きながらお礼を言うと少し笑っているであろう声が聞こえてくる。
「ほら、中入ろ?」
「・・・はい」
黒瀬さんの手が私の手と重なり、キュッと握られる。
その手に導かれるように体育館の中に入った。
手をつなぎながら体育館入るって、初めて会った時のこと思い出すな。
あの時は、この人が私が灰田くんのことを好きなのをバラすって脅されたんだっけ・・・?
でも、あれから一切バラすよ、って感じの脅しがない。
私にとってはありがたいことだけど。
「おーい、お前ら〜。ボトル出来たぞ〜」
「遅くなりました」
体育館の中に入ると、黒瀬さんが休憩中だった皆に声をかける。
「待ってました〜!!」
「加藤さんあざっす!!」
その言葉で休んでいた部員達が続々と黒瀬さんと私の周りに集まってくる。
うわぁ・・・またか。
そんなことを思いながら、ドリンクを配るために黒瀬さんに掴まれた手を離そうとする。
けど、キュッと掴まれて離すことが出来ない。
思わず黒瀬さんの方を見ると、私の方を見ていたずらっ子のように笑った。
「・・・俺から離れないで?」
「っ・・・!」
耳元を顔を寄せ、甘えるような声を耳元で囁く黒瀬さん。
その言葉で、私は動きを止めざるを得なかった。
「ほら、取ってけ」
「アザーッス」
カゴを差し出しそこから取り出していく部員達。
私は、黒瀬さんに手を握られながらそれを見つめることしか出来なかった。