略奪☆エルダーボーイ

それから、私達の試合が始まった。



私は、コーチと監督の隣に座って選手達の試合を観戦しながらスコアをつけていく。



何度か練習していたけど、いざ本番ってなると試合展開の速さに戸惑いながら書いていく。



「陸っ!!」



「はいっス!!」



灰田くんが点を決め、決着が着く。



私たちの勝利だ。



整列をして挨拶をした後に試合に出ていた皆が戻ってくる。



そんな皆にタオルやボトルを配り、次の試合のために移動をした。



「伊吹ちゃん、スコアどうなった?」



「あ、はい。・・・どうぞ」



移動した先で黒瀬さんにスコア表を差し出すと、それを受け取る。



「・・・うん、ちゃんと書けてるね。偉い偉い」



「うわ・・・!?頭撫でないでくださいってば!」



そう言って、私の頭を撫で始める黒瀬さんにドキッと心臓が高鳴る。



撫でられたことで前髪がクシャクシャになつてしまう。



いつもより力が入ってるみたいだ。



「頑張ったご褒美だよ」



「ご褒美になってませんってば!」



されるがままになりながらも、口では反論する。



振り払わない理由は、黒瀬さんに頭撫でられるのが嫌いな訳じゃないから。



むしろ、心地良さを感じてしまって振り払おうと思えない。



「ふーん・・・。そういう割には嬉しそうだけど・・・なんで?」



「っ・・・!?」



頭を撫でるのをやめ、顔を近付けながらお腹に響くような低い声で囁く黒瀬さん。



思わず息を飲んで、黒瀬さんのことを見つめた。



頬に熱が集まるのと同時に、心臓の音がやけに大きく聞こえる。



「そ、そんなことどうでもいいから・・・!!試合に集中してください!!」



視線を逸らしながら、黒瀬さんの胸元を押し返して距離をとる。



口元を覆うように手の甲を当て、落ち着くために深呼吸をした。



顔、赤くなってないかな・・・?



「・・・はいはい。スコア、ありがと」



「・・・全く・・・」



差し出してくるスコア表を受け取り、黒瀬さんから離れて作業に戻る。



急にあの低い声でささやくの、やめて欲しいな。



心臓に悪い。


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