略奪☆エルダーボーイ
2回戦も危なげなく勝利し、次の試合に駒を進めた。
2回戦以降は翌日に行われるから、今日の試合は終わりになる。
あとは帰るだけなんだけど・・・。
「君、美人だね。どう?これから俺らと遊ばない?」
忘れ物がないかの最終チェックをしている時、他校の人にナンパをされてしまっていた。
「・・・人を待たせているので・・・」
「いいじゃんいいじゃん。俺達と遊ぼうよ」
「・・・いや、だから・・・」
どんな返答をしても同じような言葉を投げかけられてしまい、困り果ててしまう。
参ったな・・・滅多にこんな事されないからどう対応していいのかわかんないや。
近付いてくる男子達から逃げるように後ずさりしながら対処法を考えている時、グイッと後ろに引っ張られた。
それと同時に体に腕が回され、肩に重みを感じる。
それにふわっと漂ってきたこの制汗剤の匂い・・・どこかで・・・。
「ウチの可憐なマネージャーに・・・ちょっかいかけないでくれます?」
「く、黒瀬さん・・・!?」
何事かと思い後ろを振り返ると、黒いツンツンとした髪が目に入り、黒瀬さんの横顔が見える。
この匂い・・・黒瀬さんの使ってる制汗剤の匂いだ。
それにしても・・・近い。
ドキドキとし始める心臓の音が黒瀬さんに聞こえそうで不安になった。
「は?俺、この子に用があんだけど」
「だから、伊吹ちゃんに近付くなって言ってるんですよ。嫌がってんのも気付かない低脳なんですか?君たちは」
「あぁ!?喧嘩売ってんのか!?」
私を抱きしめる腕に力を込めながら黒瀬さんは目の前にいる男子と言い合いをする。
一触即発って、こういうことを言うんだろうか。
どこか他人事のように感じてしまう自分がいた。
「──喧嘩は、明日の試合でしましょうか。どうも運がいいのか、勝ち進めばあなた達と当たるので」
「上等だぁ!!ボコボコに凹ませてやるから首洗って待っとけ!!」
「そちらこそ、首に溜まった垢を削ぎ落としておいてくださいね」
捨て台詞を残し、去っていく男子達・・・。
それを見送った黒瀬さんは、はぁ・・・とため息をついた。
その息が首元にかかり、少しだけくすぐったくて力が入ってしまう。
「・・・全く、遅いから様子を見に来てみたら・・・なんであんなのに絡まれてるのかね」
「すみません・・・ありがとうごさまいました。でも、いいんですか?あんな啖呵切っちゃって」
抱きしめられたままの状態でお礼を言う。
本当はそろそろ離して欲しいんだけど・・・なんか、助けてもらったから離してって言い難いんだよな。
「別に構わないよ、どのみち倒す相手だし。・・・それに・・・」
「・・・それに?」
「・・・伊吹ちゃんに言い寄ってたの見てたら・・・ムカついちゃって・・・」
甘えるような声でキュッと腕に力を入れられ、思わずピクっと反応する。
なんで、声掛けられてただけでムカついたの・・・?
「あの・・・黒瀬さん・・・?」
「・・・皆、待ってるね。行こうか」
真意を解いただそうとした時、肩や体に触れていた黒瀬さんの熱が遠ざかった。
それと同時に、私と手を繋ぎ歩き出す黒瀬さん。
「あ・・・はい──って、なんで手を?」
「また声掛けられたりしないように。牽制だよ」
「・・・そうですか」
黒瀬さんがいれば声掛けてこないと思うけど・・・。
まぁ、実際にいても声掛けられ続けたからその予防かな?
そう思いながら私の手を引き歩いている黒瀬さんのことを見つめた。