略奪☆エルダーボーイ

──翌日、大会2日目の朝。



バスに乗り、大会会場までの道のり──私は、黒瀬さんの隣に座ることになっていた。



まぁ、無理やり隣に座らされたって言う方が正しいんだけど・・・。



「♪〜」



鼻歌を歌いながら爪の手入れをしている黒瀬さん。



なんでこんなに機嫌良いんだろ・・・?



そんなことを思いながら黒瀬さんの爪の手入れを見つめていた。



「機嫌、良さそうですね」



「んー?・・・いや、機嫌がいいわけじゃないけど・・・伊吹ちゃんが隣にいるからかな?昨日は隣になれなかったからね」



爪の手入れが終わる頃に声をかけると、手入れに使った道具をバックの中にしまい、嬉しそうに答える黒瀬さん。



またそうやって勘違いしそうな態度をとって・・・。



「またそんなこと言って・・・私が勘違いしたらどうするんですか」



「・・・勘違いして欲しいんだよ」



「・・・え?」



溜息をつきながら黒瀬さんに伝えると、少し間を置いてから私のことを見つめて呟く。



勘違いして欲しいって・・・え?



どういうこと・・・?



「あの・・・勘違いして欲しいって・・・なんでですか?」



「・・・さぁ?なんでだろうね。考えてみてよ」



いたずらっ子のような笑みを浮かべ、そうささやく黒瀬さん。



なんでだろうって・・・わかんないから聞いたのに・・・はぐらかされちゃった。



「それとね、今日は俺から離れないで」



「え・・・?なんでですか?」



「ほら、昨日声掛けてきた奴らいたでしょ?そいつらと会うかもしれないし・・・俺といれば、前みたいなことにならないだろ?」



「そういうことなら・・・分かりました」



コクリと頷くと、満足そうに笑う黒瀬さん。



その表情が、ちょっとだけ可愛いとさえ思えてしまった。



最近、変だな・・・。



この言葉で、会話は終了する。



だけど、まだ到着には時間がかかりそうだ。



それに・・・少し眠い・・・。



車の揺れがいい感じに眠気を誘い、段々まぶたが重くなってく。



ウトウトとし始め、気がついたら私は意識を手放していた。

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