略奪☆エルダーボーイ
体育館の中に入ると、部員全員でアップを取って試合の準備を済ませていた。
2日目ともなると、強いチームしか残ってないから気を抜けないな。
かと言って、私はスコアを書く以外何も出来ないんだけど・・・。
「前の試合終わったから移動すんぞー!!」
荷物を持ちながら、部員全員に号令をかける。
その言葉で一斉に体育館の中に入っていき、アップを始める。
私はその間に、スコア表をバインダーに挟め、ドリンクの準備を始めた。
とは言っても、あらかじめドリンクは準備していたから、メンバーがすぐに飲めるようにしておくだけなんだけど。
「伊吹さん、タオルお願いします」
「あ、うん。ベンチに置いとくね」
「ウィッス」
試合開始のためにの集合がかかり、灰田くんは使っていたタオルを私に渡してくる。
それを受け取り、たたんでベンチへと置く。
たたんでいる途中に柔軟剤のいい匂いがしてきて、恥ずかしくていたたまれない気持ちになってしまった。
そんな中、試合が始まる。
序盤は相手にリードされていて、それに喰らいついていく展開になっていた。
「気ぃ抜くなよ!食らいつくぞ!!!」
「っしゃあ!!」
皆に声をかけて士気をあげる黒瀬さん。
その言葉を受けて、徐々に点数を挽回挽回ていく。
そして、ついに逆転。
そのまま試合が終わった。
「ナイスだ!!陸!!」
「アザーッス!」
試合が終わった後、嬉しそうにしながら灰田くんの頭を撫でる黒瀬さん。
灰田くんも嬉しそうに笑いながら素直に受け入れていた。
その表情を見て、キュンとしてしまう。
だけど・・・今、誰に対してキュンときたんだ?
ふとした疑問を持ちながら、皆にタオルとボトルを渡していく。
「伊吹ちゃん、俺にもちょうだい」
「あ、はい。・・・どうぞ」
私の後ろから滝のような汗をかきながら、少し息の上がってる黒瀬さんが声をかけてくる。
それに少し驚きつつも、タオルとボトルを渡す。
「ありがと。・・・次の試合始まるから引き上げんぞー!次の試合まで体冷やすなよー!!」
「ウィッス!!」
その言葉を皮切りに、荷物を持って移動をした。
移動中、またナンパをしてきた男子達がいるチームが前の方を歩いてくる。
うわ・・・また会っちゃった・・・!
「あっ、美人マネちゃ──」
「おやおやどうもー、さっきぶりですねー。俺達は勝ち上がりましたよー」
私に向かって歩いてくる2人組の声を遮るように私の前に立って話しかける黒瀬さん。
その背中を見て安心してしまう自分がいた。
「ちっ・・・テメェには用はねぇっつーの。つか、俺らが勝ったら美人マネちゃん貰うからな」
「ダメですよ、俺達が勝つので」
「ちっ・・・言ってろ。・・・美人マネちゃーん、俺ら勝つから。一緒に遊ぼーね〜」
そう言い残してナンパしてくる男子達がいるチームが去っていく。
「ほんと、あのチームって自由奔放ッスね。伊吹さんの気持ちちっとも考えてないし」
「あぁ。好きにさせてたまるかっての」
灰田くんが黒瀬さんの隣に立ち、少し苛立っている雰囲気をまとっている。
黒瀬さんも負けず劣らずの雰囲気だ。
あのチームが勝てば・・・次の試合で当たる。
負ければ・・・私はあの人達と・・・。
嫌だなぁ・・・。