略奪☆エルダーボーイ

あの後、着替えを済ませて受け取った痛み止めを飲んだ。



黒瀬さんに巻いてもらった上着をたたんでトイレから出て体育館に向かう。



ズボンは多分黒瀬さんのものだろう。



前に借りた時みたいにズボンが大きくて、裾をまくらないと引きずってしまうぐらい長かった。



体格差、そんなにあるかな・・・?



そんな事を考えながら体育館の扉を開け、中へと入った。




「あ、伊吹ちゃん。おかえり」



どうやら、今は休憩中だったみたい。



部員のみんながボトルの置いてある場所に集まり、タオルを首に巻いて汗をふき取っていた。



この中であのことを言うのは・・・ちょっと恥ずかしいけど・・・。



「あの・・・ありがとうございます」



他の部員の目もあったから深くは言わずにお礼を言った。



多分、この言葉だけで分かるはずだろうから。



「気にしなくていいよ。・・・それに、誰も気付いてなかったみたいだから、安心して」



「・・・はい」



じゃあなんで、黒瀬さんは気付いたんだろう。



そう思ったけど、深くは追求しなかった。



「・・・やっぱり、俺のだと大きいみたいだね」



「まぁ・・・黒瀬さんは私よりも身長も高いし脚も長いですからね」



裾を何度か折っているのを見ながら、アハハと笑う。



これを見てると私、脚短いのかな・・・なんて思ってしまう。



それにしても、少し肌寒い気がする・・・。



そんなことを思いながら軽く腕をさすった。



「ふふっ、多少は我慢してね。じゃ、俺練習戻るから。上着、かけときな」



「え──あ・・・」



そういうと、私が手にしていた黒瀬さんの上着を手に取って私の肩にフワッとかけた。



それと同時に、柔軟剤の匂いがフワッと漂ってくる。



肩にかけられた上着に手をかけて呆気に取られているうちに、 黒瀬さんは練習に戻っていった。



本当、こういうことサラッとするんだから・・・。



そう考えながら、滞っていたマネージャーの業務を続けた。



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