略奪☆エルダーボーイ
そのままの状態で歩くこと15分。
黒瀬さんにお姫様抱っこされながら家の前へとたどり着く。
や、やっと着いた・・・。
なんか、同じ道のりのはずなのにいつもの5倍長い気がした。
「あの・・・ありがとうございました。もう大丈夫なんで・・・」
「ダメ。フラフラしてるんだから、部屋まで連れてくよ」
「は、はぁ!?さ、さずかにそれは──ちょ、ちょっと待って!!」
そう言ってる間にも、黒瀬さんは片手で私のことを抱えて私の家の玄関に手のかける。
そして、ガチャっと扉を開けた。
「あ、伊吹。おかえ──えぇ!?」
扉を開けると廊下の突き当たりの所にお母さんが立っていて、私のことを見るなり声を上げた。
それもそうだろう、娘が知らない男の人にお姫様抱っこされながら帰ってきたんだもん。
「初めましてー、黒瀬 聡です。伊吹ちゃん、体調悪いみたいなんで送ってきました。お部屋まで運んでいいですか?」
「あら・・・なんだか悪いことしちゃったわね」
「いえ、俺が好きでしてることなので。では、お邪魔しますね」
そう言って自分のを靴を脱いだあと、しゃがんで私の靴を脱がせる黒瀬さん。
「あ、あの・・・本当に大丈夫なんで・・・!!降ろしてください・・・!!」
「いいから。じっとしてなさい」
母親に見られてるという事実が、さらに羞恥心を煽る。
耐えきれなくなり、少し暴れながら訴えるけど黒瀬さんは聞く耳を持たず・・・。
そのまま階段を登っていき、私の部屋の前まで運ばれてしまう。
「入るよ」
「あ、ちょっと待って・・・!!」
黒瀬さんは私の静止を聞かずに私の部屋の扉を開け放つ。
特に散らかってはいないけど、黒瀬さんに見られるのに抵抗があった。
そのまま気にすることも無く私の部屋の中に入り、ベットの近くまで歩いていく。
そして、優しくベット脇に座るようにゆっくり降ろされた。
「俺が出ていったら、着替えするよね?部屋着は・・・これかな?」
そう言って、タンスの上に畳んで置いといた部屋着を手に取り、私に渡す。
「あ、あの・・・」
「ん?なに?」
「えっと・・・すみません、何から何まで・・・」
受け取った部屋着を触りながら、恐る恐る黒瀬さんの表情をうかがう。
呆れられてないかな・・・。
「こういう時ぐらい甘えていいんだよ。お腹、冷やさないようにしなね?」
座っている私に視線を合わせながら、優しく微笑む黒瀬さん。
その表情を目にした瞬間、ドキドキと心臓が高鳴り出した。
「・・・はい」
「うん、いい子。その服返すのいつでもいいから」
恥ずかしさで混乱してる中、うつむきながら返事をすると、頭を撫でて部屋を後にした黒瀬さん。
撫でられた頭を触りながら、黒瀬さんの出ていった扉を見つめていた。
「・・・ずるい人・・・」