略奪☆エルダーボーイ

第8話 意識の変化

加藤 伊吹side



翌日、両親が歩かせるのは心配だからと車で送ってくれたから珍しく黒瀬さんと登校しなかった。



そのせいで黒瀬さんに借りたジャージを返せずにいる。



借りたのは学校のジャージだし、早めに返した方がいいよね。



そう思った私は黒瀬さんのジャージを返すために3年生の教室がある階に来る。



だけど、黒瀬さんがどこのクラスか分からずに立ち往生していた。



「あれ?どうしたの?2年生だよね?3年のクラスに何か用?」



3年の先輩であろう男子が廊下をウロウロしている私に声をかけてくれる。



この人に聞けばわかるかな?



「あ、えっと・・・はい。2年の加藤です。あの、黒瀬さんって何組ですか?」



「あぁ、黒瀬ね。黒瀬なら2組だよ。ついてきな」



黒瀬さんが何組なのかを知っているみたいで、案内をしてくれる。



そして2組と書かれた教室の扉を開け放った。



「おーい、黒瀬ー。2年の美人さんが呼んでるぞー」



「んあ?2年の美人さん・・・?あっ、伊吹ちゃん!!どうしたの?」



先輩の男子に呼ばれた黒瀬さんは、飲んでいた紙パックの飲み物を置いて私のところに駆け寄ってくる。



「昨日借りたジャージを返しに来ました。ありがとうございます。あと、他の先輩から借りたポーチも」



「あぁ、別に部活の時でも良かったのに」



黒瀬さんに紙袋に入れたジャージと女先輩に借りたポーチを渡す。



本来ならこのポーチは直接返したかったけど、名前も知らないし顔も見てないから黒瀬さんから返してもらうしか方法がなかった。


「学校のジャージだったから今日使うかと思って。朝は別々に登校しましたから」



「そっか。ありがと」



私が差し出した紙袋とポーチを受け取りながら、微笑む黒瀬さん。



「いえ、お礼を言わなきゃいけないのは私の方です。ありがとうございました。そのポーチ、借りた先輩に返しておいて貰えますか?」



「りょーかい。だけど、無理しちゃダメだからね?」



「はい。では、失礼しますね」



心配そうに私のことを見ている黒瀬さんに大丈夫だと伝えるために微笑みながら答える。



そして、お辞儀をした後にその場から歩き出した。



「・・・なぁ、黒瀬。付き合ってんの?」



「んー、────」



教室から立ち去る時、そんな会話が聞こえてきたけど、黒瀬さんがなんと答えたのかまでは分からなかった。


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