略奪☆エルダーボーイ
授業が終わり、部活の準備を始める。
お腹の痛みは痛み止めを飲んだからだいぶマシだし、昨日みたいなことにはならないだろう。
体調悪くなっても休憩しながら作業すればなんとかなるだろうし。
荷物を整理しながらそんなことを考える。
「おーい、伊吹ちゃーん。部活行けそう?」
荷物を背負って部活へと向かおうとした時、いつものように教室の扉から黒瀬さんが顔を出した。
疑問形なのは私が昨日あんな感じだったからだろうか。
「あ、はい。大丈夫です。問題ありません」
「・・・そっか」
黒瀬さんに近付きながら返事をすると、優しく微笑んで頭を撫で始めた。
それを片目を閉じながら受け入れる。
「ツラかったら言ってね。仕事変わるから」
「薬も飲んでるし、痛みも昨日ほどじゃないので平気ですよ?」
撫でるのをやめて心配そうな表情で私の顔をのぞきこんでくる黒瀬さんに大丈夫な事を伝える。
お腹の痛みも昨日ほどじゃないし、気持ち悪さもほとんどないに等しい。
多少貧血気味な感じはするけどめまいはしないし。
「ダーメ、無理は禁物なの。ちょっとでもしんどいなって思ったら俺に言いなさい」
「わかりました・・・でも、心配しすぎな気がするんですけど・・・」
確かに昨日は今世紀最大に酷かったし、それを見たら心配するのもわかる。
だけど、顔色だって昨日よりはマシになってるしそんなに心配する程でもないはずなのに。
「──好きな子のことだもん。心配させてよ」
「・・・え?」
私の方に甘い視線を向けながら言葉を紡ぐ黒瀬さん。
それを聞いて私の思考は停止した。
今、なんて・・・?
黒瀬さん、私の聞き間違いじゃなければ、好きな子のことだもんって言ったよね・・・?
しかも、黒瀬さんの視線がいつにも増して熱を持ってる気が・・・。
「・・・なーんてね、冗談。──ほら、行こ」
さっきの言葉を取り消すように冗談だと告げたあとに歩き出す黒瀬さん。
なんだ・・・冗談か。
冗談だと言われ、少し残念に感じる自分がいた。
なんで・・・残念に感じてるんだろ・・・私。
私は灰田くんの事が好きなはずなのに・・・。
「あ、はい。って・・・待ってください・・・!」
なんでだろうと不思議に思いながら、私の前を歩いている黒瀬さんを追いかけた。