略奪☆エルダーボーイ
黒瀬 聡side



朝準備している時に伊吹ちゃんから電話が来た。



しかも内容なんてものは無いもので・・・。



だけど、伊吹ちゃんの声がいつもより強ばっているのだけはわかった。



急いで準備をして家を出ると伊吹ちゃんが俺の家の前で何かに怯えながら立っていた。



その近くに人影があって舌打ちをしてどこかへ行ったのを見て、付きまとわれてたんだと察する。



怯える伊吹ちゃんをなだめ、手を繋ぎながら学校に行く。



いつもなら拒否られそうなものなのに、何も言わずに手を繋いでくる伊吹ちゃんに相当怖かったんだろうな、なんて思う。



教室まで送ってったけど、大丈夫かな?



一応伊吹ちゃんのお友達に託してきたけど・・・心配だな。



そんなことを考えながらお昼を過ごし、次の授業のために移動している時、陸が姿を現した。



「・・・黒瀬さん」



「ん?なんだ?珍しいな、こんな所で」



どこか覚悟の決まった目をしている陸に声をかけられ、立ち止まる。



1年の移動教室はほどんどないのにこんなところにいるなんて・・・どうかしたのか?



「ちょっと話があって。今良いっすか?」



「あぁ、いいよ。何?」



わざわざ俺に話ってことは部活のことか?



そんなことを考えながら陸の話を聞こうとする。



「ちょっとここじゃアレなんで・・・少し場所変えません?」



「あ?別に構わねぇけど・・・」



「アザッス、じゃあ来てください」



部活の話なら別に移動する必要は無い。



何の話だ・・・?



そんなことを思いながら陸について行くと、人気のない廊下まで連れてこられた。



「んで、話ってなんだ?」



「・・・直球で言いますね。俺、伊吹さんのこと気になってます。恋愛的な意味で」



「!?・・・マジで言ってる?」



陸から語られたのは予想外なことで驚きを隠せない。



陸が伊吹ちゃんを・・・マジかよ・・・。



「マジで言ってます。このこと、黒瀬さんには言っといた方がいいと思ったんで」



「・・・なんでその事を俺に言ったんだ?別に俺に言う必要ねーんじゃねぇの?」



「だって黒瀬さん、伊吹さんの事好きですよね。あんなに伊吹さんにアプローチしといてとぼけられても困ります」



動揺してるのを悟られないように、平静を装って陸に問いかける。



だけど、陸にはお見通しのようで俺の気持ちを知っているようだった。



バレてるわ・・・だけど、コイツが伊吹ちゃんに気があるってことは・・・両想いってやつか・・・。



「だから黒瀬さんには伝えておこうと思いまして。話はそれだけです。時間取らせましたね」



「・・・・・・そーかよ。んじゃ、俺移動教室だから」



陸にそう告げて移動教室の場所へと向かう。



陸が俺にこうして伝えたってことは・・・アイツ、伊吹ちゃんに対して行動するってこと・・・だよな。



「チッ・・・もう誤魔化してるヒマねぇな・・・俺も、覚悟決めるか・・・」



頭をガシガシとかきながら、自分の気持ちを伝える覚悟を決める。



何かにつけて誤魔化してたけど・・・もう、誤魔化すのはやめだ。



体育館に毎日足を運んで恋してるような顔で誰かを見つめていた伊吹ちゃんの表情を見て好きになったから。



その表情を・・・俺に向けてもらえるように。


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