略奪☆エルダーボーイ
その日も黒瀬さんに迎えに来てもらって部活に勤しむ。
特にいつもと変わらない部活風景だったはずだった。
灰田くんと黒瀬さん以外は。
「伊吹さん、ドリンクください」
「伊吹ちゃーん、俺にもくださーい」
ドリンクはいつもの場所に置いてあるにも関わらず、わざわざ私の手から受け取ろうとする2人。
しかも、どこかギクシャクしてそうな2人のやり取りに疑問を抱きながらボトルを手渡した。
何かあったのかな、あの2人。
そんなことを考えているうちに、部活終了の時間がやってきた。
片付けを率先してやっている時、重い荷物を持ち上げようとする。
「伊吹さん、俺やりますよ」
持ち上げようとした時、私に近寄ってきた灰田くんに声をかけられる。
そして、私が持ち上げようとしていた荷物を横から奪われた。
「え、大丈夫だよ。このくらいなら私が・・・」
「女の子なんだから、無理しちゃダメですよ」
そう言って私に向けて微笑みながら重い荷物を片付け始めた。
意外と力強いんだ・・・なんて思いながら灰田くんを見ていると、後ろから誰かの腕が回される。
「伊吹ちゃん、なにしてんの?」
「!?」
後ろから抱きついてきたのは黒瀬さんだった。
そのことに気付いた私の心臓はバクバクと高鳴り始める。
「・・・陸に荷物取られた?」
荷物を持っていく灰田くんのことを眺めたあと、私の方に視線を向ける黒瀬さん。
「・・・はい。持とうとしてるのを取られました」
「・・・ふぅん」
私を抱きしめる腕に力を込めながら、興味無さそうに返事をする。
やっぱり、灰田くんと黒瀬さん何かあったのかな?
部活中も様子おかしかったし・・・。
「まぁいいけど・・・それよりさ、今日一緒に帰ろ?」
甘えるように伝えてくる黒瀬さんにハテナを浮かべる。
いつも一緒に帰ってるのに、急にどうしたんだろ?
「はい・・・いいですけど・・・急にどうしたんですか?いつもそんなこと聞かないじゃないですか」
「んー・・・何となく。片付けもだいたい終わったし、着替えておいで。待ってるから」
「あ・・・はい、わかりました」
そう言って抱き締めていた腕を離す黒瀬さん。
不思議に思いながら彼から離れ、更衣室に行って着替え始めた。