略奪☆エルダーボーイ

翌日──



早朝からの練習を終え、片付けを済ませた後に夏祭り会場に向かう。



だけど、部活中にメンバー全員で行こうという話になり、部員総出で夏祭りに行くことになっていた。



「結局、部活メンバー全員で来るはめになりましたね」



「・・・そーですね」



周囲にいる部員達を見ながら、テンションの低いまま私の隣を歩く黒瀬さんに声をかける。



昨日はあんなにはしゃいでいたのに、それが嘘かのようにしょげてしまっている黒瀬さん。



あの感じならテンション高くなってもいいのに・・・朝早かったから疲れたのかな?



「でも、人数多い方が楽しいですよね」



「俺は伊吹ちゃんと2人が良かったですけどネ」



「!そ、そうですか・・・」



なんとかテンションを上げてもらおうと声をかけると、不貞腐れたような態度でそっぽを向きながら告げる黒瀬さんにドキッと胸が高鳴る。



いや・・・黒瀬さんのことだ、その言葉に特に意味は無いはず・・・!!



黒瀬さんから視線を逸らして高鳴る心臓を落ち着けようとする。



「おーい、伊吹さーん!!こっちにいちご飴ありますよー!!食べませんかー!?」



遠くから灰田くんが私を呼ぶ声が聞こえてくる。



しかも、私がいつも食べているいちご飴があるとの事だった。



「えっ、本当!?今行く──」



「!伊吹ちゃん!・・・行かないで・・・」



「・・・えっ・・・」



灰田くんの元へと行こうとした時に黒瀬さんに名前を呼ばれ、腕を掴まれる。



ドキッとしながら後ろを振り返ると、焦ったような表情を浮かべた黒瀬さんがすがるように私のことを見つめてくる。



「陸の所、行かないで・・・」



「っ・・・・・・」



私に甘えるように肩に頭を乗せながら行かないでと告げる黒瀬さん。



肩から伝わる黒瀬さんの熱に、なぜか言葉が詰まって出てこない。



なんでこんな甘えたみたいに言うのかな〜・・・!



「・・・あれ、どうしたんですか?いちご飴食べないんですか──」



私が黒瀬さんの行動にドギマギしていると、灰田くんが近寄ってくる。



そして、私と黒瀬さんのことを見て固まっているようだ。



「・・・・・・あー・・・、ちょっとは良くなったよ。ありがとう、伊吹ちゃん」



「・・・え?」



私の肩から頭を上げ、よく分からないことを口走る黒瀬さん。



その言葉に、私はハテナを浮かべた。



どういう意味・・・?



「・・・人酔いっすか?」



「まぁ、そんなとこ。引き止めて悪かったね、伊吹ちゃん。いちご飴、買いに行こ」



「は、はい・・・」



人酔いだと言っていたけど、そんな素振りなんて一切見せてなかった。



私が灰田くんの近くに行こうとしたのを引き止めたように感じたんだけど・・・気のせいかな?



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