略奪☆エルダーボーイ
夏祭りから1週間。
夏祭りの時の黒瀬さんの不思議な行動の真意が分からないまま、つぐみとお昼ご飯を食べながら過ごしていた。
「あ、いたいた。加藤、今日日直だったよな?職員室に来てくれ。頼みたい仕事がある」
「あ、はい。今行きます」
「あ、いや飯食ってからでいい。職員室で待ってる」
廊下から顔を出した担任の先生に声をかけられ、ご飯を食べる手を止めて先生について行こうとすると、後でいいと言われてしまう。
それだけを言い残して職員室へと戻っていく先生。
「日直ってこういう雑務頼まれるから大変だね」
「まぁ、仕方ないよ」
残っていたご飯を食べきり、手を合わせた後にテキパキと片付ける。
ゆっくりでいいって言われたけど、なるべく早く済ませちゃいたい。
「じゃ、私行ってくる」
「いってらっしゃーい」
お弁当箱を片付けたあとバックの中にしまい、席を立つ。
まだご飯を食べているつぐみに見送られながら、教室を出て職員室へと向かう。
職員室へと向かっている途中、人気のない廊下に黒瀬さんと、黒瀬さんに向かい合うように女の子が立っているのに気がついた。
あれ・・・黒瀬さん?こんな所で何してるんだろう・・・。
「で?どうしたの?こんな所に呼び出して」
「あの・・・私、ずっと前から黒瀬さんのことが好きでした!!付き合ってください!!」
「!?」
突然聞こえてきた告白のセリフに、思わず身を隠す。
まさか告白現場に遭遇するとは思ってなくて動揺してしまう。
黒瀬さん・・・OKするのかな・・・。
そう考えた時、胸の奥がモヤモヤとし始めた。
「ありがとう。・・・でも、俺好きな子いるから。ごめんね」
モヤモヤとしている時、黒瀬さんの返事が聞こえてきてなぜかホッとしている自分がいた。
・・・どうしてホッとしたんだろ・・・私には関係ないはずなのに・・・。
「え・・・ど、どんな子ですか?」
「うーん・・・そうだな・・・。年下で、身長が高くて・・・それを気にしてる美人で可愛い子だよ。アプローチしてるんだけど上手くいかないんだ」
黒瀬さんの言った特徴が自分が当てはまっている事に気が付き、ドキドキと心臓が高鳴り始める。
今の、まるで私のことを言ってるみたいじゃん・・・!
いや、でも早とちりかもしれない。
深く考えちゃダメだ・・・!
「・・・上手くいかないなら、私でもいいじゃないですか。私も年下で身長高いですよ?」
「そうじゃないんだよ。俺、あの子以外興味無いんだ」
「・・・そうですか・・・失礼します。話聞いてくれてありがとうございました」
そう言って、私の方に歩き出してくる女の子。
その瞳には涙が浮かんでいた。
それにしても可愛い子だな・・・それでも、振られちゃうんだ・・・。
なぜか、私までダメージを受けている感じがした。