略奪☆エルダーボーイ
その女の子が私の隣を過ぎ去り、どこかへ行ったあと私も職員室に行こうとした時──
「・・・伊吹ちゃん、出て来ていいよ」
「!?」
私が隠れていた所に歩み寄ってきて顔を出す黒瀬さん。
声をかけられるとは思ってなくて、ビクッと肩を震わせる。
嘘・・・気付いてたの・・・!?
「・・・いつから気付いてたんですか?」
「伊吹ちゃんが向こうから歩いてきた時からかな」
隠れるのをやめて、黒瀬さんに向き合いながら問いかけると、私が黒瀬さんを見つけた時から気付いていたようだ。
つまり、私がいることを知りながら女の子を振っていたことになる。
「良かったんですか?あんなに可愛い子振っちゃって」
「うん。俺、好きな子いるし」
黒瀬さんのことを見上げながらさっきの女の子のことを訪ねると、好きな子がいると言い切る黒瀬さん。
それを聞いて、以前に言われた“好きな子”発言が頭をよぎる。
あの時は、冗談って言ってたけど・・・さっきの好きな子の特徴といい色んな事が重なって私のことなんじゃないかと勘違いしてしまう。
「・・・さっきの聞こえてたよね?俺の好きな子の特徴・・・思い当たる節、ない?」
「い・・・いえ・・・」
黒瀬さんの問いかけにNOと答える。
本当は心当たりがある。
だけど、それは私の憶測でしかないから気のせいかもしれないし・・・。
「・・・そっか。俺、結構伊吹ちゃんにアプローチしてるつもりなんだけどなぁ・・・」
「・・・え?」
黒瀬さんの呟いた言葉は私を驚かせるのには充分すぎるものだった。
私に・・・アプローチしてる・・・?黒瀬さんが・・・?
「あぁ、こっちの話。それより、伊吹ちゃんはどこ行くの?」
「えっ!?・・・えっと・・・職員室に。今日日直で先生に呼ばれてて」
「そっか、引き止めてごめんね。じゃ、また放課後にね」
「はい、また・・・」
呆気に取られている私のことなんて知らずに黒瀬さんが聞いてくる。
なんとか返事をすると手を振りながら教室へと向かう黒瀬さん。
その後ろ姿を見つめながら、さっきの黒瀬さんの言葉を思い出す。
黒瀬さん・・・さっき、アプローチしてるって言ってた・・・よね。
もしかしなくても、私のこと──