略奪☆エルダーボーイ

第9話 関係の変化


黒瀬さんから衝撃の発言を受けてから私の様子はおかしかったと思う。



変に黒瀬さんを意識してしまって、声が裏返ったり過度に反応したりしてしまっていた。



流石に1人でこのことを抱えるのが無理だなと思い始め、つぐみにそのことを相談することにした。



「え!?あの先輩に好かれてる!?」



「かもしれないって言ってるじゃん・・・!!それに声大きいよ・・・!!」



次の授業のために移動している時、つぐみに相談すると、私の発言に驚いたのか大声で私の言葉を繰り返すつぐみ。



つぐみに対して人差し指を立てて口元に当てながら静かに話をするように促す。



「だって、伊吹の口からそんな事聞くとは思わないじゃん!いつもなら“好かれるなんて有り得ないから”って言うくせに!」



「だ、だって・・・冗談って言ってるけど言葉に熱がこもってたりするし、アプローチしてるつもりって直接言われたし・・・」



つぐみの勢いにしどろもどろになり、語尾が弱くなりながらも答える。



いつもの私ならそんなことないって言い切るんだろうけど・・・今回は違う。



アプローチしてるって告げられたらそういう事だと認識せざるを得ないじゃん。



「もう、どーすんのさ。アンタ、灰田くんが好きなんでしょ?」



「どうするもこうするも・・・まだ告白された訳じゃないし・・・」



アプローチしてる、とは言われたけどまだ告白はされてない。



だからどうすることも出来ない状態なのだ。



「そんなの時間の問題よ!!それに──」



「いーぶーきちゃん」



「っ・・・!?」



つぐみが何かを言いかけた時、後ろから黒瀬さんの声が聞こえてくる。



ビクッと肩を震わせながら後ろを振り向くと、私の背後に黒瀬さんが私のことを見ながら近付いてくるのが見えた。



「くっ、黒瀬さん!?いっ、いつからそこに!?」



「伊吹ちゃんが“黒瀬さんが私のこと好きかもしれない〜”って言ってた所から」



どうやら私がつぐみに相談し始めた時から聞いていたようだ。



どうしよう・・・!!



「あっ・・・えーと・・・」



「あの!私、先日お会いした小日向つぐみ。伊吹の親友です」



言葉が出てこずに困っていると、私の前に1歩踏み出して黒瀬さんに近付いたあと、自分の名前を告げるつぐみ。



な、何するつもり・・・?



「親切にどうも。黒瀬 聡です」



「黒瀬さん。伊吹が灰田くんの事好きなのは知ってますよね!?」



「ち、ちょっとつぐみ・・・!!」



真剣なつぐみの横顔を見つめながら、つぐみにすがるように止めに入る。



だけどつぐみは止まらない、すがりついた私を押しのけて黒瀬さんを睨みつけるように見つめていた。



「知ってるよ」



「じゃあ、なんで伊吹にちょっかいかけてるんですか?伊吹の恋路の邪魔、しないでくれませんか」



「それは無理な話だね。だって俺、伊吹ちゃんのこと好きだから。みすみす陸にあげたくない」



「!?・・・へ・・・?」



つぐみの発言に黒瀬さんが言い返した言葉は、私が好きというものだった。



驚きのあまり、腑抜けた声が出てしまう。



さ、さすがに冗談・・・だ、よね・・・。



「冗談なんかじゃないから。前に言ってた言葉も、今の言葉も」



私の顔を熱のこもっている真剣な目で見つめてくる黒瀬さん。



つぐみも私もいる中で冗談を言うとは思えない。



つまり言葉通りなら、今までの言葉も行動も冗談じゃなかったということになる。



それに気付いてしまった私の頬は、これでもかというほど熱を持っていく。



「・・・そうですか。失礼しました」



「わかってもらえて良かったよ。じゃ、俺移動教室だから」



それだけ言い残し、スタスタと去っていく黒瀬さん。



さっきの言葉の衝撃で黒瀬さんの姿を見ることが出来ずにうつむく。



「・・・告白されたけど、どーすんの?伊吹。・・・伊吹?」



「ッ・・・」



つぐみに声をかけられていることはわかっている。



わかってるけど・・・動揺のせいで上手く言葉を紡げない。



口元に手の甲を当てて、熱くなった頬を冷めるのを待つ。



「・・・そんな真っ赤な顔してよく灰田くんが好き〜なんて言えるよね」



「だってぇ〜・・・!!」



両手で顔を覆い、しゃがみこむ。



最近、灰田くんと一緒にいる時より黒瀬さんと一緒にいる時の方がドキドキしてしまっている気がする。



それに黒瀬さんに告白された時、嫌な気持ちは1mmも起きなかった。



それどころか、嬉しいとさえ思ってしまったのだ。



私──灰田くんと黒瀬さん、どっちが好きなんだろう・・・。



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