略奪☆エルダーボーイ
黒瀬さんからの告白を受けた日の放課後。
私はいつもより早めに体育館へと向かっていた。
いつものようにゆっくり準備していると、多分黒瀬さんが迎えに来る。
告白された今、どういう態度で黒瀬さんに接すればいいのか分からない。
だから、黒瀬さんから逃げるように体育館に向かう。
それにしても・・・黒瀬さん、やっぱり私の事好き・・・なんだ・・・。
でも、私にいい所なんてないと思うんだけど・・・。
可愛くないし、身長だって高いし、目付き悪いし・・・。
それに──
「伊吹ちゃーん」
「っ!?く、黒瀬さん・・・!?」
考え事をしている時に後ろから黒瀬さんの声が聞こえてきたと思ったら、後ろからギュッと抱き締められドキドキと心臓が早鐘を打つ。
どんな顔して会えばいいか分からなかったけど、これのせいでさらに分からなくなってしまった。
「置いてくなんて酷いじゃーん。何?考え事?」
「い、いえ・・・特には・・・」
肩にあごを乗せながら聞いてくる黒瀬さんに言葉を濁す。
あなたのことを考えてました、なんて言えない・・・。
「ふぅん・・・俺、告白したのに・・・意識してくれないの?」
「なっ・・・なんの事ですか・・・!?」
耳元で甘くささやく黒瀬さんの言葉に、声が裏返る。
こっちは告白される前から意識しまくってるっつーの・・・!!
「あ、声裏返った。意識はしてくれてるんだね。嬉しい」
「そ、そんな事誰も言ってないじゃないですか・・・!」
嬉しそうな声色で抱き締める腕に力を込める黒瀬さん。
いたたまれなくなって視線を泳がせながら思わず否定した。
「態度に出てるよ。無自覚?だとしたら俺ちょっと調子に乗りそう。・・・好きだよ、伊吹ちゃん」
「っ・・・」
耳元で甘くささやくように改めて告白されて、言葉を紡ぐことが出来ない。
うつむいて黙り込んでいると、黒瀬さんからふふっと笑い声が聞こえてきた。
「・・・黙り込んじゃった。照れてるの?かーわいい」
「う、うるさいです・・・!早く体育館行きますよ・・・!!」
お腹に響くような低い声で言われた言葉で限界を迎え、黒瀬さんのことを振り払う。
そして、黒瀬さんの腕から逃げ出すように体育館に歩き出す。
「・・・あらら〜、逃げられちった。・・・ねぇ、伊吹ちゃ〜ん、待ってよ〜」
先を歩く私の後ろから黒瀬さんの声が聞こえてくる。
だけど、歩くスピードは変えずに体育館に向かった。