略奪☆エルダーボーイ
私の誕生日当日、私はつぐみと買い物をしていた。
スマホで見ていた店に行き、つぐみがお目当てのバックを買いに行く。
「はい、コレ。プレゼント」
「ありがとう」
会計を済ませ、ラッピングしてもらったバックを私に渡すつぐみ。
それを微笑みながら受け取った。
「それにしても──あれ?あそこにいるの黒瀬さんじゃない?」
「えっ!?黒瀬さん!?」
つぐみの発した“黒瀬さん”の名前を聞いた途端、ドキッと心臓が高鳴る。
つぐみと向かい合ってて気付かなかったけど、私の後ろに私服姿の黒瀬さんがいたようだ。
後ろを振り返って確認すると本当に黒瀬さんがいて、その声に黒瀬さんが私達に気付いたようで視線をこちらに向ける。
「ん?あぁ、伊吹ちゃんと小日向か。どーしたの?おでかけ?」
「今日伊吹の誕生日なのでプレゼントを買いに」
私達に近づいてきた黒瀬さんの問いかけに淡々と答えるつぐみ。
黒瀬さんは私の誕生日を知らなかったみたいで驚いているようだ。
「へぇ、今日伊吹ちゃん誕生日なんだ。おめでとう。何か欲しいものある?」
「え、えっと・・・」
「伊吹、ここのお店の靴が欲しいんですって!でも私はもうプレゼント買ったんで、これで失礼しまーす!!」
いまだに黒瀬さんと話す時に告白された時のことを思い出して緊張してしまう。
うつむいてなんと言おうか考えていると、つぐみがそう言って私を残してその場から立ち去ってしまう。
「えっ!?つぐみ!?ちょっと待っ──」
“ちょっと待って”そう言おうとした時にはすでにつぐみの背中は見えなくなっており、私の声は届かなかった。
ちょっとぉ!!黒瀬さんと2人きりはハードル高いってぇ!!
「・・・小日向っていつもあんな感じだね」
黒瀬さんもつぐみの背中を見ていたのか、遠くの方を見ながら呆れたように呟いた。
告白してきた人と2人っきりにしないでよつぐみ〜!!
「もう・・・つぐみのバカ・・・」
つぐみにはもう既に聞こえないけど、口からつぐみへの文句が溢れ出る。
どんな顔して接すればいいのかわからないのに、2人きりにしないでよ〜・・・!!
「バトンタッチされちゃったから伊吹ちゃんへのプレゼント、選ぼっか」
「えっ!?いえ!そんな!いらないです!」
黒瀬さんが私をのぞき込みながら余裕のある笑みを浮かべる。
だけど、さすがに申し訳ないし両手を胸の前に出してブンブンと振って遠慮する。
さすがに部活の先輩に貰うなんて気が引けてしまう。
「俺が贈りたいの。いいでしょ?」
「・・・でも・・・」
「いいから。ほら、入るよ」
申し訳ないから、と言おうとした時に私の腕を引いて強引に店内に入っていく黒瀬さん。
私は腕を引かれるまま店内へと入っていった。