略奪☆エルダーボーイ

黒瀬さんに腕を引かれて店内に入ると、ズラっといろんな商品が陳列されていた。



「へぇ〜・・・結構種類あるね」



「まぁ・・・そうですね・・・」



「それで?欲しいのってどれ?」



「欲しいって言うか・・・」



黒瀬さんの問いかけにチラッと広告に乗っていた靴を見る。



写真で見た時も思ったけど、シンプルだけど可愛いデザインをしている。



やっぱり、いいなぁ・・・。



「・・・もしかして、コレ?」



「!!なっ、なんでわかったんですか!?」



黒瀬さんは私がチラ見していた靴を指差した。



言い当てられるとは思ってなかったからものすごく驚いてしまう。



「物欲しそうな目で見てたからそりゃわかるよ。サイズある?」



「あの・・・いらないです」



「?なんで?遠慮しなくていいんだよ?」



私の欲しい靴の前にしゃがみこみながら箱に書いてあるサイズを確認している黒瀬さんにいらないと伝える。



すると、黒瀬さんは不思議そうにしていた。



「遠慮とかじゃなくて・・・この靴、ヒールになってるから・・・私が履いたら・・・」



「身長が高くなっちゃう・・・ってこと?」



「ハイ・・・」



うつむきながら理由を言うと、続きの言葉を言い当てる黒瀬さん。



可愛いし、履けるものなら履きたい。



だけど、身長が高い私が履いたらさらに高くなっちゃう。



身長が低い子が履いたら見栄えするんだろうけど、私が履いちゃったら・・・ただ、背が高い女になるだけ・・・。



「・・・1回履いてみて」



「え、でも・・・」



「いいから。履いて?」



「あ・・・はい・・・」



黒瀬さんの勢いに負け、自分のサイズに合う靴を試しに履いてみる。



だけど、予想した通り立ってみるとかなりのヒールになってるからかなり身長が伸びた感覚に陥った。



「履きましたけど──っ!?」



靴を履いて立ち上がった時、目の前に黒瀬さんが立っていてあまりの近さにドキッと心臓が高鳴る。



ドキドキと早鐘を打つ心臓の音がバレないか不安になりながら黒瀬さんを見つめた。



「それ履いても俺より身長低いから大丈夫だよ」



「あ・・・えっと・・・」



間近で身長を比べながら呟く黒瀬さん。



確かに、これを履いても黒瀬さんの身長には追いついてないけど・・・。



「俺が隣を歩く時なら、気にする必要ないんじゃない?」



「・・・はい・・・」



「決まり。それ買ってくるね」



「お、お願いします・・・」



うつむきながら返事をすると、満足そうに私の履いていた靴を箱に戻してレジへと向かう。



そんな後ろ姿を見つめながら、締め付けられる胸に手を当てた。



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