略奪☆エルダーボーイ
「・・・で?どこを好きになったの?」
話を変えるように切り出した伊吹。
どこを好きになったのか・・・か。
昔から好きだった、ってことは思い出せるけど・・・どこを好きになったって聞かれるとわかんないな。
「・・・わかんない。気付いた時にはもう好きになってたから・・・」
「ふぅん・・・。まぁわかるかも。私も黒瀬さんがそうだったし・・・」
思ったことを素直に言葉にする。
どこを好きかなんて、考えたこと無かったけど・・・どこなんだろう。
「一生言わないつもりだったけど・・・伝えずに後悔するより、伝えたいって思っちゃって・・・」
「・・・そっか」
「陸くん、私の事どう思ってるのかな・・・やっぱ、ただの幼馴染だとしか思ってないよね・・・」
考えれば考えるほどドツボにハマってしまい、弱気なことを口走ってしまう。
口にした途端、ズキズキと痛みだす胸を押さえた。
「──気になるなら本人に聞いてみたら?」
「え?」
「灰田くーん!! 」
歩くのをやめた伊吹は遠くの方を見つめて手を振りだした。
伊吹の見ている方に視線を向けると、そこには歩いていた陸くんがいた。
「!!伊吹さんに──つぐみさん!?どうしたんですか、こんな所で・・・」
「ちょっと雑談。だけど、私用事あるから。つぐみの事、お願いね」
「ちょっと、伊吹・・・!」
驚きながら駆け寄ってくる陸くんにそう告げて、伊吹はその場から去っていく。
私が声をかけたけど、私の言葉は届かず・・・伊吹は長い足を駆使してすぐにどこかへ行ってしまった。
「・・・もう・・・ゴメンね、伊吹が強引に・・・」
「いえ、ちょうどつぐみさんに用事があったんでむしろ助かりました」
申し訳なく思いながら謝ると、私の方を見ながら柔らかい笑顔でむしろ助かると伝えてくる陸くん。
あぁ・・・そうか・・・この気遣いと笑顔が・・・。
「・・・好きだなぁ・・・」
「!!」
思わず呟いてしまった言葉が聞こえたのか、陸くんが驚いたように目を丸めた。
それを見てハッとする。
「あ、いや!!違くて・・・!!いや、違わないけど・・・そのっ・・・!!」
「・・・つぐみさん、俺、考えてみたんですけど・・・俺、まだ伊吹さんの方に気持ちが傾いてます」
「・・・うん、知ってる」
慌てながら否定を否定していると、陸くんが言葉を紡ぎ始めた。
そんなの、わかってる。
ずっと見てきたから・・・知ってる。
「だから・・・お願いできますか?」
「え・・・なにを・・・?」
「あなたを好きにさせてください。伊吹さんを忘れられるぐらい、強く」
「・・・・・・へ」
言葉の意味がわからず間の抜けた声が出る。
好きにさせてください・・・?
あなたとは付き合えませんじゃなくて・・・?
「・・・都合よく聞こえますよね」
「え、ううん!そんなことない!・・・けど、私でいいの?」
「つぐみさんがいいです。ダメ・・・ですか?」
「ううん!いいよ・・・!」
「ありがとうございます。じゃあ・・・今日の部活、見に来てください。帰りも一緒に帰りましょう」
柔らかく微笑みながら問いかけてくる陸くん。
私はそれに笑顔で答えた。