略奪☆エルダーボーイ

飲み会があってから1ヶ月後──



灰田くんとつぐみの結婚式にお呼ばれされ、聡さんと共に参列していた。



「伊吹ちゃん、そのドレスすごく綺麗だね。似合ってる」



「そういう聡さんこそ、似合ってますよ。その服」



式の準備をしている間に集まっていた聡さんが声をかけてくる。



いつもの髪型ではなく、アレンジのされた聡さんは新鮮な感じがしていた。



「あ、俺が学生の時に誕生日に贈った靴、まだ履いてたんだ」



「当たり前じゃないですか。聡さんから貰ったものなんですから」



私が履いているのは、高校時代に聡さんにプレゼントされたヒールだ。



大切に履いているから数年経った今でも現役で活躍している。



「前は全然履きたがらなかったのに。変わったね」



「自分より背が高い人がすぐ近くにいてくれてますからね。気にするだけ無駄です」



「それは光栄ですね」



隣に立っている聡さんに笑いかけながら、本心を伝えると、嬉しそうに微笑み返される。



昔は身長を気にしてなかなか履けなかったけど、今は違う。



コンプレックスではなくなった・・・と言うにはまだ早いけど、聡さんが隣にいる時は気にならなくなってきた。



そんなことを考えていると、進行役の方が話を始める。



「あっ、始まりますよ」



式が始まると、2人がバージンロードを歩いて登場する。



純白のウエディングドレスを着たつぐみを見た途端、感極まってしまう。



「つぐみ、綺麗・・・!」



「変わったよな、小日向──あ、灰田になったのか」



「ふふっ、そうですね。呼び方、変えないとつぐみに怒られちゃいますね」



「そうだな」



そんなことを話しながら、指輪の交換に誓いのキスを交わす2人。



結婚式は順調に進み、会食が済んだあとにバルコニーに出てブーケトスに変わる。



「えいっ!!」



ブーケを手にしたつぐみが後ろを向き、合図に合わせてブーケを投げる。



宙を舞うブーケは、放物線を描きながら私の目の前に来る。



思わず手が出てしまい、意図しない形でキャッチしてしまった。



「・・・え?」



「伊吹!!私からの誕生日プレゼント!!受け取ってね!!」



「た、誕生日って言われても・・・」



振り返って私がブーケを手にしていることを確認したつぐみが満足そうに笑いながら大きな声を出す。



確かに私の誕生日はもうすぐだ。



ブーケトスをキャッチした人は、次に結婚できると言われているけど・・・それは聡さん次第だし・・・。



チラッと隣にいる聡さんに視線を向けると、私の方を見てニヤッと不敵に笑う。



「じゃあ、俺からの誕生日プレゼントは──俺の苗字、ってのはどう?」



「っ・・・!!貰っていいんですか!?」



「もちろん、“黒瀬 伊吹”になってくれる?」



嬉しさのあまり食い気味に聞いてしまう。



そんな私を見て愛おしそうに見つめながら私の手を取りキスを落としてくる。



「っ・・・はい!!」



嬉しさのあまり人目も気にせず聡さんに抱きついた。



2人の結婚式があると聞いてからずっと私も、と望んでいた私からしてみると最高のプレゼントだ。



「ふふっ、ブーケトスを思った方向に飛ばす練習して良かった。次は伊吹の結婚式かな?」



「あはは、次は俺達が参加する番みたいですね」



2人が私達の姿を見ながら、微笑み合う。



幸せムードで2人の結婚式が幕を閉じた。



次の結婚式は参加する側じゃなく、開催する側になりそうだ。






【END】
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