一匹オオカミくんと、今日も、屋上で
私がどう思われているのか分かって良かった……わけない。
嘘でもいい。勘違いしたまま高校生活を楽しく過ごしていたかった。
この日以降、私は蘭と距離を取るようになった。皆と一緒に決めて入った吹奏楽の部活が終わると、逃げるように部室を後にする。
今まで楽しんでできていた部活も全然楽しくないし、日中喋る相手がいない、そのうえ一人行動は思った以上に孤独だった。
そういえば、斜め後ろの席の宝生くんも学校に上手く馴染めないでいるらしく、休み時間、昼休みはもっぱらどこかに行っている。一週間に二度ほどは必ず休み、翌日は顔に怪我をしていることから「危険なヤツ」「関わっちゃダメ」と恐れられるようになってしまった。
私も周りの噂を真に受けて宝生くんとはまともに話したことがない。
『モテるけど恋愛できない可哀想な子』
私がこう思われていたように、噂話なんて、都合良く仕立て上げたいだけなのに。
今なら宝生くんと喋れる気がする。