一匹オオカミくんと、今日も、屋上で
◆
一人で行動し始めてからの昼休みは、自分の席でお昼ご飯を食べた後、机に顔を伏せてやり過ごすことが多かった。
けれど、宝生くんと話してみたかった私は、お昼休憩のチャイムが鳴ると、宝生くんの後を追うようにお弁当片手に教室を出る。
校舎を出て着いた場所は、今は使われていない立入禁止の旧校舎だった。
窓ガラスも割れていて中にガラスが散らばっている。床もところどころ湿って腐っている。いつ、穴が空いてもおかしくはない。
「……ひっ、ううっ」
宝生くんに見つからないように、おどおどしながら一歩一歩進む。けれど、慣れた足取りで進む宝生くんの姿はとっくに見えなくなっていた。
幸いコツコツと鳴る足音で宝生くんがどこに向かっているのか聞き分けることができ、先に進む。
階段を登っていると、宝生くんが階段上から顔を覗かせるように私を見下ろしていた。
「なにしてんの」
あまり聞くことはできない、心地良い落ち着いた声が、宝生くんから発せられた。