生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

プロローグ

 ラザシュタイン皇国。
 皇帝の納める皇国は豊かで自然と恵みに溢れた、精霊に愛された土地。
 精霊の愛し子には慈しみを持ち、精霊たちは愛し子のために大地に恵みを与える。
 愛し子をないがしろにするものには容赦しない。
 だから、本来は大切にされるはずだった令嬢は現在もそのことを知られずに生家で虐げられた生活を送っていた。
 もう少しで精霊が国を見放すかに思われたとき、彼女の転機を見た精霊は少し待つことにしたのだった。
 彼女が幸せなら、それでいい。
 でも、そうじゃないなら愛し子は精霊界に連れて行けばいい。
その時は大地への恵みも無くしてしまえ。
 そんな精霊たちのささやきは、精霊たちににしか届かない中でしっかりと交わされていた。
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 ラザシュタイン皇国、皇都にあるフェザーライト侯爵家。
 そこの末娘であるシエラは、母親がメイドだったために庶子の令嬢として生家での扱いは散々。
 侯爵夫人である義母アマンダが虐げている筆頭なので誰も助けないし、姉のアリアンも義母同様にシエラを虐げてくる。
 朝ごはんも昼ごはんもなく、夕飯は薄い野菜だけのスープにカッチカチでカビまで生えたパンのみ。
 それがもらえればいい方で、時には一日水だけの時もある。
 そんなときはなぜか窓辺に果実が置かれているので、精霊様にお礼を言って食べている。
今のところバレてはいないようだ。
「シエラ! 掃除がまだ終わってないわよ!早くきれいにして頂戴」
 そんな義母の言葉に「はい、ただいま」と返事をして動くシエラは今年十七歳になったが、食事環境のためか見た目は十五歳前後で小柄、細すぎるので女性というより少女、幼さが目立つ感じだ。
「シエラ!掃除を早く終わらせて、身支度の手伝いに来なさいよ!」
 義母の次には姉のアリアンも用事を言いつける。
 シエラには休む暇も与えないと言いたげに、あれこれと言いつけてくる。
 それで、出来が悪ければ扇子で打たれたり、物を投げつけられたりと当たられるのでシエラは結構必死で仕事をこなす。
 時には機嫌が悪いだけで、平手打ちされることもあるのだから勘弁してほしい。
 しかし、令嬢教育も社交デビューもさせてくれないところを見るとこのまま生家でメイドで終わりそうで、シエラは近年本気で家からの脱出を模索していた。
 掃除も終わり、お茶会に出掛けるアリアンの着付けの手伝いも終わり、なんとか昼ごはんにパンのひとかけらをもらって一息付けたところに侯爵家の家令がシエラのもとにやって来た。
 とても珍しいことに本日は本宅に仕事で不在がちな父がいるらしく、シエラを呼んでいるとのこと。
 さてさて、なにを言われるのやら……。
 シエラは心の中で盛大なため息を吐き続けて父の執務室へと向かった。
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