生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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 そもそも、いままでの愛し子様は五大精霊の誰かが祝福を与えたもので、多くても二大精霊の祝福を受けた愛し子様しかいなかったと記録されている。 
 しかも、愛し子の子がまた愛し子になるとも限らず、血筋で決まるものでもない。
 その時の精霊の動きや周りにいる精霊の多さで愛し子と判定されてきたらしい。
 大体、物心ついて教会に祈りに行くと精霊が祝福を授けるのでそれで愛し子と判明し、その後は愛し子様が幸せに暮らせるよう、気にとの橋渡しのサポートをするのが教会で、どこに愛し子様が現れるかは分からないので各地に教会を立てたというのが教会の始まりなんだそう。
「ですので、私が皇帝に愛し子様に関しての苦言や意見を言うことは通常業務範囲ですので遠慮なくおっしゃってくださいね」
 大司祭長セルゲンさんの、素敵な言葉を聞けたのでますます安心である。
「私は生家でほぼ虐待みたいな生活を送っていたので、いまだ皇都に住まうお姉様には会いたくないんです。お姉様は公爵家に嫁ぎましたので、私が会いたくないと言っても愛し子誕生の祝典に来てしまうのであれば、私はそれに参加したくありません」
 自由に、自分の意見が忌憚なく言える環境って大事だね。
 生家では、どれだけ嫌だと思っても口にすれば叩かれたし、食事を抜かれたりして散々だった。
 十二年の生活で、お義母様とお姉様とは分かり合うことはないし離れたからにはずっと離れたままでいたいというのが私の希望だ。
「シエラ様の希望は確かに私が聞き届けましたので、皇帝陛下にしっかり伝えておきましょう。歴代最高の愛し子様ですからね。シエラ様の周りは精霊と妖精で溢れておりますし、これが失われるのは国が無くなるのと同義ですので」
 セルゲイ様がしっかり話してくれるならば安心だけれど、あのお姉様だ。
 私のことは都合のいい使用人としか思っていなかった人なので油断ならないと思う。
 だって、いつでも思うとおりにしてきた人だもの……。
「セルゲイ様、それでもお姉様が皇宮内にいた場合は式典には参加ぜず皇都の辺境伯邸に籠りますとお伝えください。その際は精霊王ウィンガルムと土の精霊が結界を張るので、精霊の認める者しか立ち入れない空間になると。精霊から隠れることは出来ないので、私にはすぐにわかると」
 私の言葉に、大司祭長様は頷いて私に隠し事ができるはずがないこともしっかり伝えておくと言うと少しお茶をしただけだが、オーロで皇都へと戻っていった。
 次にお会いできるのは、何事もなければ愛し子誕生の式典だろう。
 来月、およそ四か月振りに皇都へ行くことになっているけれど、正直思い出もなにもないし、皇都を出歩いた記憶もないので、やっぱりなにも楽しみがないともいう。
 甥っ子に会うのとマーマリナお義姉様会うのは楽しみかもしれない。
 とりあえず、出来るだけのことはしたのであとはなるようになれ!でしかない。
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