生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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「殿下は、愛し子様に関する文献等をお読みになっているのですか?」
 私は思わず問いかけると、皇太子殿下はにこやかに教えてくれる。
「ここ十年ほどで一気に植物の育成が思わしくなく、農作物の作付も悪くなる一方でした。そういったことが過去にも無かったか確認していくうちに愛し子様の文献にたどり着き、国の恩恵について知り、現状がもしかしたら二代目愛し子様の時に愛し子様に望まぬ婚姻を望んだときに近いと感じ調べていました」
 私がどれだけ久しぶりの愛し子でも、国への恩恵を考えれば歴代愛し子については記録があるのは当然だろうと思う。
 国を統べるならばなおのこと、精霊の愛し子に関しての記録は大事な文献のはずだ。
 教会にももちろん記録はあるだろうけれど、皇宮にも記録はあってしかるべきものだと思う。
 それを陛下が読んでいないというのはいささか問題だと思うし、この皇都の植物の育たなさは辺境に行けば分かるほどの異常だ。
「そうなのですね。私が生家で令嬢ではなくメイド扱いされた時期と皇都の植物育成の悪化の時期はほぼ同じだと思いますよ」
 私の言葉に、両陛下と皇太子殿下はますます顔色を悪くした。
「フェザーライト侯爵家は、シエラ様にどのような扱いを?」
 もう、話を聞くのが堪えられそうにないほど顔色を悪くしている皇妃殿下を支えてなんとか聞いてはいられている陛下。
 その二人を背に話を進めるのは皇太子殿下だ。
「私は侯爵様とメイドとの間に生まれたのです。一応貴族の届けは出されていますが、産みの母は男爵家の庶子だったそうです。そして、継母であり侯爵夫人のアマンダは私を五歳までは一応令嬢として自分の娘と同じように育てましたが、侯爵領の飢饉と領地の案件が立て込んで皇都から侯爵が離れる時期が増えるとメイド扱いになりました」
 私の発言に、皇太子殿下は頷くと私の年齢は聞いていたのだろう。
「確かに、皇都の植物育成の悪化と時期が被りますね。ちなみに精霊様や妖精はいつごろから見えていたのですか?」
 それは物心ついたころには見えていたと思う。
 つかまり立ちするころには周りにふわふわした光がいたことがあったし。
「多分、生まれてそう経たないうちには見えていたのではないかと。つかまり立ちして、歩き出すころには周りにいたと思います」
 私も、いつの間にか周りにいてそれが当たり前だったからいつから?とか考えたことがなかった。
 つかず離れずなお付き合いというか、特に果物持ってきてくれる土の精霊さんはシャイなのよね。
 いつも助けてくれて、綺麗なお花に美味しい野菜や果物を作ってくれる。
「声が聞こえたのは、アイラザルド辺境伯との婚約が決まってからです。ですがいつから側に居たと言われると、生まれて記憶もないうちからだと思います」
 皇太子殿下は一つ頷くと、私に聞いてきた。
「シエラ夫人は、どのような暮らしを望みますか?」
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