生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

「今回の辺境伯の婚約の打診は我が家では断ることは出来なくはないが、侯爵家とアイラザルド辺境伯家だと若干うちのほうが下だ。受ける形になるが構わないな?」
 あぁ、辺境伯家は数年前に隣国との国境の争いを制して国を守ったので現在辺境伯だけれど爵位が上がる話も出ていたと聞く。
 しかし、前辺境伯が断ったうえで息子に爵位を譲ったと聞いている。
「えぇ、構いません。それで、私はいつ家を出るのでしょう?」
 婚約となったら、それはそれでお義母様とお姉様は面白くないと思い風向きがきつくなりそうなので、出来る限り早く家を出れると有難いんだけれどね。
 そんな、私の内心の想いを後方に込めて言ったところで父の執務室に訪問者が来た。
 どうやら父の帰宅を聞いた誰かが会うために執事が来た様子。
「旦那様、デリアン様とアマンダ様がお話があるとのことですがいかがいたしましょう?」
 さて、どうするのかしら?
 ようやく出された、お茶飲みながら私は父がどうするのか様子を見ている。
「アマンダはサロンで待たせておけ。デリアンはここへ」
 まぁ、確かにお義母様は話がしたいと言っても自分から執務室に来ることはない。
 話があるから、こっちに来てタイプの人である。
「失礼します、父上。こちらの書類の確認をお願いしたく」
 こちらも、仕事人間な兄の登場。
 お父様に見せる書類の確認をしつつの入室のためまだ、私がいることに気づいていない。
 お兄様も、こと仕事に関してはお父様と同類の人間である。
「デリアン、シエラの隣に座ってくれ」
 その声掛けで、ようやく書類から顔を上げて私がいることに気づいたお兄様。
「シエラ、どうしてそんな色褪せたメイド服なんだ?」
 結婚して四年、その前も父に代わって皇宮で内政勤務しつつ、皇都で父の領地運営補佐をしていたお兄様は忙しく、うちにはたまに寝に帰り、結婚後は離れでお兄様家族と使用人で生活しているから、基本顔を合わせない。
 こんなに近くで生活していても接触がなければ、異母妹の扱いには気づかないものである。
 うちの男性陣は、とことん仕事バカである。
「お兄様、私は基本五歳からずっとメイド服です。ここ数年はメイド服以外の服は着ていませんよ?後でクローゼットを見たらいいです。まぁ、部屋も使用人部屋ですけれど」
 私の再びの事実暴露に、お父様に久しぶりに会ったお兄様も再び絶句。
「マーマリナが、シエラは大丈夫なのか?と時々聞いてきていたから、母上にシエラの様子を聞いていたが元気よと言っていた。それをそのまま、伝えていた。最近マーマリナに聞かれることが増えていたが、母上に聞いてもいつも同じだから大丈夫だろうと……」
 えぇ、元気は元気でしょうね。
 無給金メイドとして、好きなだけ働かせていたのですから……。
 それにしても、マーマリナ義姉様は同じ敷地にいても数年会わない義妹を覚えていてくれたのですね。
 顔を合わせたのは結婚式の四年前だけなのに。
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