生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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「隣国との小競り合いの戦勝会のときでもここまでは囲まれなかったわよね?」

 お義母様は言い、それに頷くお義父様。

「今回は精霊の愛し子のお披露目会だから仕方ないと思う。話は知っていても実際に愛し子を目にするのは初めてだから」

 たしか、二百年ちょっとぶりの愛し子だって言っていたものね。

 さらに一緒に移動してきている、精霊王ウィンガルム様はサクッという。

『それに、歴代愛し子の中では断トツの力のある愛し子だからな。五大精霊の祝福と精霊王の祝福を受けた愛し子は今までにいないからな』

 そうなのよね、大体が愛し子は五大精霊のうち二つ、か三つの祝福を受けたものが愛し子と呼ばれると皇宮の書物の記載にあったと皇太子殿下が教えてくれた。

 初代の愛し子様が精霊王様の祝福を受けたという記録以来、精霊王の祝福を受けた愛し子は実は私が二人目だという話だった。

「そういったわけで、盛大な祝典を開いたのですが。愛し子様には負担を強いてしまい申し訳ありませんでした」

 再びの謝罪に、私は首を横に振りつつそれを止める。

「まぁ、一度くれば収まるだろうことなので、そこまでお気になさらず。そういえば、精霊たちに拘束されたうちのお姉様ってどうなりましたか?」

 すっかり準備だ挨拶だと忙しくて忘れていたが、拘束されて部屋に監禁されてたはずである。

「あぁ、ベルンゲルト公爵令息夫人だろう?公爵令息が大慌てで回収に来て、今は皇都の公爵邸で外出禁止令出されて離れに隔離していると報告を受けたよ。そこも、精霊様がすでに公爵令息夫人のみ出られないようにされているって。きっとシエラ夫人が皇都にいる間は安心の環境だと思うよ」

 皇太子殿下はさらっと、そんな風に話してくれた。

 そして、話が落ち着いたところで皇太子殿下のお隣の婚約者様を紹介いただいた。

「初めまして、辺境伯夫人。私はヴョーエル公爵家のレイシアと申します。愛し子様とお話しできて光栄です」

 とっても好意的に、接してくれてマーマリナお義姉様と近い雰囲気に仲良くなれそうだなと感じた。

 そして、レイシア様はどうやらこの部屋に漂う小さな精霊や妖精が見えていると感じる。

 たまに、ちょっとしたいたずらをしている精霊を気にするそぶりを見せるから。

 とくに、ウィンガルム様の移ったリルで遊んでいる妖精たちにハラハラしているのが分かった。

「レイシア様は妖精や精霊がみえるのですか?」

 私の問いかけに、コクっと縦に頷き同意を示すレイシア様に私は笑みを浮かべて言った。

「この子たちはウィンガルム様にとって見たら孫とかそんな感じの子どもたちで、遊んでても元気だなくらいのものだから大丈夫ですよ」

 辺境伯領でも、ここの皇都のお邸でも妖精や小さな精霊たちがまとわりついて遊んでいる風景はよく見られたもので、特に違和感もないし、危険でなければウィンガルム様もリルも好きにさせているのを見かけている。

「まぁ、精霊王様はとても寛大ですのね」

 そうね、一番の御長寿だからそれくらいでは怒らないわね。

 いくつなの?って疑問に思って聞いたけことがあるけれど、ウィンガルム自体がすでに歳を数えるのを辞めたとのことで正確ではないが二千歳は超えたかなとかいう回答だった。

 不思議な生体の大爺ちゃんとひ孫たちくらいの感覚だと思う。
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