生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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さて、シエラが家族で買い物を楽しんでいる間。

 そこに会いに行こうとするも、ことごとく妨害に会ったアリアンがいた。

 ドレスショップに行こうとすれば馬車の車輪が外れるし、宝飾店に行こうとすれば、上の階から水が降ってくるし、カフェに行こうとすると馬から唾をかけられるし、鳥のフンまで直撃した。

 まさに踏んだり蹴ったりの不運な一日になっているアリアン。

「なんで、こんなにシエラに会うことができないのかしら」

 アリアンは嘆くも、嫌われている精霊たちが姿を見せるわけもなく、そのいたずらは妖精エルフが主に請け負っていた。

 彼らは、大好きなシエラをいじめていたアリアンを毛嫌いしているので、そのいたずらも結構重めなものだったが、他者からすれば、ちょっと運が悪い一日だったねって具合である。

「社交に出れない次期公爵夫人では困るのよ!シエラには領地に帰ってもらわないと……」

 そんなつぶやきに、エルフたちは、この子シエラが領地に帰るの知らないんだね。

 シエラは、私たちがいっぱいの辺境のほうが好きなのにね。

 などと会話していたが、まず聞こえるわけもないので伝わらず。

 自分本位にシエラに会おうとしていたが、一日本当に空回りして終わるアリアン。

 それを見守る風の大精霊は、いい気味だわと最後に匂いの強い花をしっかり巻き散らかしてあげたのだという。

 それを手伝った、草の精霊も、土の大精霊も同じく見守り、シエラは姉に遭遇することなく皇都でのお出かけを満喫したのだった。

 翌日、早い時間にアイラザルド辺境伯家一行が皇都を出て領地に帰った話を二日ほどしてから聞いたアリアンだったが、懲りずに妹に会おうとしていたのが宰相で現公爵にバレて一か月の謹慎命令が下り、社交界への復帰がさらに遠のいたのはやはり、自業自得なのであろう。

 どこまでも自分本位なアリアンは、その後たまにシエラが皇都に来るたびに精霊や妖精の嫌がらせを受けることになるが、それもまた自業自得なのである。

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