生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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 辺境伯領への帰り道も、天気に恵まれて順調に進み途中の街もお父様やお母様も一緒に観光し楽しい日程で領地までたどり着いた。

「大旦那様に大奥様、旦那様に奥様も皆さん元気に戻られてなにより」

 帰ってきた私たちをドルツがにこやかに出迎えてくれた。

「ただいま、ドルツ。サラサも。エリンとフェルトとミリアはいい子にしていたかしら?お父さんとお母さんを長いこと借りてしまって、ごめんなさいね」

 出迎えの場に、イジェンヌとロイドも帰ってくることが分かっていたので子どもたちも待っていたのだ。

「シエラ様、おかえりなさい。ちゃんといい子にしていたよ」

 一番大きなエリンが代表して返事をし、フェルトはロイドにミリアはイジェンヌにくっついておかえりを言っている。

「エリン、二人の面倒も見て大変だったでしょう?偉かったわね。お土産たっぷり買ってきたから、みんなで楽しみましょうね」

 私は弟と妹を優先させる優しいエリンの頭を撫でて言った。

「はい、シエラ様。しばらくはお出かけはないですか?」

「えぇ、皇都は遠いし疲れるの。しばらくはお出かけしないわよ」

 私は素直に今回の皇都訪問で疲れたので、当分は領地でのんびりしたいものだ。

「リル!おかえりさーい」

 イジェンヌにくっついていたミリアはリルを見つけるとぱたぱたと駆け寄っていく。

『ウォン』と一声、小さめに鳴いてミリアを受け止めるリル。

 リルとミリアはこの邸の中では私の次に仲良しで、二週間ぶりの再会に双方が喜んでいるのが分かる。

 このフェンリル、けっこう面倒見がよくで子ども好きなのだ。

 そして、ミリアの襟首をつかんでポーンと上げるとその背中に乗せて、中庭の花が愛でれて日当たりのいいところへ移動してすっかりいつものお昼寝コーナーを作り上げている。

「お互い、ちょっと寂しかったのかしらね?」

 その様子を見ていた私はつぶやくと、サラサが笑って言った。

「ミリアは今回初めて両親不在でしたし、そこに仲良しのリルも出かけちゃって最初はしょんぼりしていたんですよ。カレンダーにエリンと×印をつけて皆の帰りを待っていたのです」

 なんて、可愛らしさなのか‼

 リルの行動はミリアをちゃんと見ているが故の行動だった様子。

 この二人は、とりあえず心行くまで一緒に過ごしてもらいましょう。

「まぁ、イジェンヌの子はみんないい子に育ているわね。この分なら、クロムスとシエラちゃんに子ができても侍従も侍女も問題なさそうね」

 お母様がそう言うとエリンがニコッと笑って答えた。

「ミリアはまだ難しいかもしれないけれど、僕はいつでも歓迎ですね」

 大人顔負けの返事をする九歳児、将来はドルツみたいになりそうね。

 アイラザルド辺境伯家は仕えてくれる次世代も立派に成長中で、いいことだわ。
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