生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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精霊たちに森のお願いをして、移動してもらった結果。

 騎士たちが確認に行くと、そこは例年のもりの倍くらいの実り豊かな森になっていてこのままでは野生の動物たちがいても食べきれないし、下手をすると魔物も来てしまうということで、騎士団と近隣住民たちで秋の味覚狩りが開催されることになった。

 もともと、収穫祭が開催される時期なのだけれど、今年は森の恵みも豊作だからと味覚狩りも合わせて行うことになった。

 この事態に流石に気づいたウィンガルム様が来て、精霊王が居れば魔物は来ないという安全宣言をいただき、領民で楽しく味覚狩りという運びになったのである。

「いや、森の恵みって人にも動物にもありがたいよねと思っていたんだけれど。ここまで大きな規模になるとは……」

 森の前を切り開き、味覚まつりを開催すべく設営しているのは辺境伯領の騎士団の団員たち。 

 仕事が増えたにも関わらず、みんな楽しそうに準備してくれている。

 それに、街の食堂や飲み屋などの調理人にライドなどの辺境伯邸の料理人も参加して野外調理場も設けられている。

 まさに、お祭り騒ぎなのだがそれが楽しくて仕方ない風と光の精霊がたくさん集まっていて、会場はキラキラでやっぱり眩しい。

 でも、ここに参加している皆が笑顔で、精霊たちも楽しそうで私もそんなみんなの様子が見れて嬉しいし、楽しい。

 最初は味覚が倍増に慌てたけれど、みんなで楽しめばいいんだとクロムス様とクロイスト様、ソフィア様も協力してくれて領内のお祭りにしてくれた。

 私がお祭りなんて初めてだというと、周囲は楽しい祭りにするぞと更に気合を入れてくれてこんなにたくさんの人が集まるお祭りになった。

「シエラ、疲れていないか?」

 天幕の設営に回っていたクロムス様が様子を見に来てくれて、私はずっと座っているだけなので全然疲れていないのでむしろ申し訳ないほどだ。

「私は全然疲れていないので、大丈夫です。むしろ力がなくてあまり御手伝いできなくて申し訳ないくらいで」

 私の言葉に、いやいやと周囲は手と首を横に振って否定の意思を見せてくる。

「いやここに来てから、ずっと精霊や妖精の癒しを請け負っているのだから準備以上の仕事をしているだろう?」

 そんなクロムス様の言葉に同意するようにロイドやほかの騎士や領民の中にも妖精が見える人々は頷くように同意している。

 森に様子を見に来たら、もともと森に棲んでた子たちの中にはけがをした子やお洋服が汚れたり切れたりした子たちが居て、ここに来たついでと治していたら列ができてしまったのだけれど。

 どの子も軽症なのでそこまで治すのに疲れることもなく、ウィンガルム様も側に控えてくれているのでみんないい子で並んで待ってくれていてスムーズな治療ができている。

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