生家で虐げられた令嬢は嫁ぎ先で溺愛スローライフを送ります

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「皇太子殿下、レイシア様、セルゲン様遠いところをよく、お越しくださいました。視察には辺境伯である私と共に妻のシエラも同行いたします。まずは、ワイバーンでの移動でお疲れでしょう。少し休憩しましょう」

 サロンで席に着くとクロムス様が皇太子殿下へそう伝える。

 サラサとイジェンヌ、ドルツも控えておりすでにお茶の準備がなされている。

「ありがとうございます、辺境伯。オーロはしっかりした子なのでそこまで負担なく移動出来て助かりました」

 そんな皇太子殿下の言葉にセルゲン様はにこやかに言う。

「こちらこそ、レイシア様が精霊のお力を借り補助していただいたおかげで早く安定した飛行で移動できましたよ」

 なんてやり取りを聞く。

「シエラ様、祝典ぶりですがお元気そうで良かったです」

「レイシア様もお元気そうで。オーロはいい子だったでしょう?」

 私の言葉にレイシア様は頷きにこにこと返事を返してくれる。

「えぇ、とってもいい子でしたわ。ワイバーンでの移動は初めてでしたけれど、早くても安定していてとっても素敵でした」

 レイシア様、公爵令嬢のはずだからワイバーンに乗るなんてと倒れてもおかしくない。

 それがオーロをいい子と言えて、皇都から辺境伯領までワイバーンで移動できるのはものすごいことである。

 まぁ、うちのお母様のような夫人もいるけれど結構希少な例だと思うの。

「前にソフィア様がワイバーンでの移動は爽快なのよって言っていらしたので、楽しみにしていたのです。本当に爽快で良かったです」

 レイシア様はとっても肝の据わったご令嬢だと判明した。

 そうでもないと皇太子妃候補は務まらないのかもしれない。

 さて、少しお茶とお菓子をつまんだ私はオーロとリルの寝そべるところが気になって仕方ない。

 そこに、珍しくアイラが近づいてくるのが見えた。

「まぁ、こちらにもワイバーンがいらしたのですね」

 レイシア様はアイラの動きを見るとワイバーン二頭とフェンリル一頭が寝そべっているサロンの先を眺めて楽しそうにしている。

「あの子はお父様とお母様のワイバーンでアイラと言います。とても可愛くて綺麗な子でしょう?」

 私の言葉にアイラは視線を向けると、つやつやの鱗を自慢げに見せた後にリルの横で丸くなる。

「本当に、綺麗な蒼ですね。気位の高いお嬢様な雰囲気を感じます」

 確かに、アイラはお嬢様と言われるとしっくりくる。

「お父様かお母様、私でないと触れない子なのでそこだけご注意くだされば大丈夫ですよ」

「えぇ、むやみに触れてはいけないとセルゲン様にも聞きました。オーロは結構特殊なんだと。世話係が別にいるから触れることもできるんだと聞きました」

 なるほどね。

 セルゲン様は大司祭として仕事は多忙、自分のワイバーンだとしてもなかなかすべてお世話はしきれないはず。

 お世話係が居たのね。

 オーロは、リルを挟んでアイラの反対側にいる。

 大人しく座って、出してもらった水を飲んでいる。

 皇都からここまで三人乗せて移動したのだから、オーロも疲れたことだろう。
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