どこにもいかないで
そんなオレに、冷ややかな目をよこしつつ姉貴はこう言った。
「いやー、ガキにはわからないよね?」
それから玄関ドアを開けて、さっさと家の中に入っていった。
(ガキじゃないし)
ドアを開けようとすると、ガチッと音がして開かない。
(姉貴のやつ!鍵かけやがった!)
面倒くさい。
どっちがガキだよ。
インターホンのベルを鳴らしても、誰も応答してくれない。
(母さん、出かけてるのかな?)
わざわざ鞄から家の鍵を取り出すはめになり、イライラする。
(……まぁ、いいか)
駒澤くんのことを思い出すと明日が待ち遠しくて、イライラした気持ちもどこかへいった。
翌日。
オレは少し早く起きて、身支度を整えた。
いつもより早い時間にバス停に向かう。
バス停では中学生の行列。
男子も女子も、制服のシャツの襟元をパタパタ動かしている。