どこにもいかないで

田嶋くんは歯を見せて笑って、
「いや、ごめん。知っているよ、同じ小学校だもんな」
と、言った。



「うん。実はオレも、田嶋くんだなってわかっていた」

「なんだよ、無駄な自己紹介じゃ〜ん」



田嶋くんがケラケラ笑ってくれる。

オレもつられて笑ってしまう。



「高浜くんってさ、いつも誰といるの?」

「え?」

「オレも知ってる奴かなって。小学校一緒の奴?」

「……いや、オレ、ひとり」



そう答えたオレに、田嶋くんは目を丸くして、
「えっ、なんかごめん」
と、言いつつ、
「なんだ、じゃあ、話しに行くわ」
なんて笑った。



「えっ?」

「あ、ひとりでいたい人? 孤独を愛するさすらいの人?」



田嶋くんが真面目な顔で言うので、オレは思わず噴き出し、
「あはっ、なにそれ! 違うし!」
と、笑った。



バスがやって来て、座席に座る時。

田嶋くんが隣に座って。



「高浜くんってさ、音楽とか聴く?」
と、また話しかけてくれた。
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